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逆さ男
第四章
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「それであいつの世話をするよ」
「それで話し相手になるんだな」
「俺も戻れたんだ、じゃあ俺が行ってもいいだろ」
「そうだな。それじゃあな」
「行って来るな」
「それじゃあな」
 二人は笑顔で言い合いそしてンマサがそのムカのところに行った。こうしたことが続いてだった。
 逆さ男の奇病は順番になったが村人達が互いに助け合い励ましあって大事にはならなかった。兆党もなったがそれでもこう言うのだった。
「いや、かえってな」
「よかったっていうんだな」
「うむ、よかったわ」
 こうアンガと酒を飲みながら言うのだった。
「確かに厄介な病気じゃったがな」
「そもそも何でこんな病気になったんだろうな」
「それはわしもわからぬ」
 確かに奇怪極まる病気だ、しかも原因がわからないというのだ。
「しかしそれでもな」
「誰も死なないしな」
「しかもお互いに助け合ったからのう」
「村の団結は前より強くなったな」
「うむ、それを考えるとな」
 その酒を飲みながら言う。
「よかったわ」
「そうだな。確かにな」
「正直なった時は困った」
 逆さ男になった時はだというのだ。
「生きられるかと思った」
「それで三日で治るのか」
「本当に不安になった。だがな」
「それでもか」
「皆に助けられて何とかなった」
 長老はアンガにこのことも言った。
「そして村もな」
「前よりも遥かにまとまりがよくなったな」
「前もそれ程ではなかったがな」
 村の雰囲気は悪くなかった。平穏で互いにそれなりに助け合っていた。だがそれが逆さ男の病の後で余計にだったのだ。
「しかし今はな」
「それ以上だな」
「本当によくなった」
 長老はしみじみとしたアンガに話す。
「病がそうさせたな」
「そうだな。俺も女房とな」
「さらに仲良くなったな」
「同じ時期に同じ病気になったせいか」
 それで共有意識ができたというのだ。そしてこれは。
「村全体がそうだな」
「うむ、同じ病にかかってな」
「変わったな、いい方向にな」
「確かに厄介な病だ」
 今も罹っている者がいる、逆さまになって寝ている者が。
 しかしその中でこうも言うのだった。
「だがもたらしてくれたものはな」
「大きいな」
「その通りだ。これは神か精霊がそうさせているのか」
 そうした存在があえてこの奇妙な病を流行らせて人々と助け合わせ連帯意識を生み出させようとしているのではないかというのだ。
「そう思うと心憎いというか面白いというか」
「そうしたことだな」
 アンガもこう長老に言う。確かに奇怪な病だがそれがもたらしたものは実に多いことに気付いた彼等だった
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