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逆さ男
第二章
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 村の長老も怪訝な顔でアンガに対して言う。
「とりあえずじゃ」
「ああ、どうすればいいんだ?」
「その手だと無理じゃろ」
 動けないのではなく場所がどうしようもなかった。手は手のある場所にあるから役に立つ、しかし足の場所にあるとだ。
 しかもアンガは今手で立っている。次第に疲れて寝転がってしまった。
 長老は寝転がった彼にこう言った。
「足もな」
「ああ、疲れた」
「それではどうしようもない」
 これが長老の返答だった。
「諦めてそのまま寝ておれ。狩りも釣りもできんじゃろ」
「畑はどうして耕せばいいんだ?」
「その手で鍬を持てるか?」
 長老はアンガに問うた。
「手の場所に足があってじゃ」
「足の場所に手があってな」
「それでは無理じゃ」
 とてもだというのが長老だった。
「足で鍬は持てんわ」
「そうか」
「絶対に無理じゃ」
 またアンガに言う。
「暫く女房共々寝ておれ」
「そうするしかないか」
「大人しく寝ておれ」
 長老はまたアンガに言う。
「三日で治るそうじゃしな」
「三日で治らなかったらどうするんだ?」
「とりあえず三日様子を見る」
 長老は確かな顔でアンガに告げる。
「それで治らなかった羅漢が得るとしよう」
「三日か。わかった」
 アンガはその額の場所にある筈の口で言う。
「それで本当に治ればいいな」
「うむ、飯とかの世話は人をつけるからな」
「飯も食えない」
 手があるべき場所には足があって足の動きをする。問題外だった。
「尻も拭けない」
「そうじゃな」
「これでは病人じゃないか」
「というかそのものじゃ」
 それ以外の何者でもないというのだ。
「まあ大人しくしておれ」
「やれやれだな」
 アンガも女房も項垂れるしかなかった。そして今はそのまま横になって寝るだけだった。飯もその他の世話も村人達にしてもらった。
 その中で彼は言うのだった。
「本当にな」
「まあ我慢だ」
「じゃあ女房と一緒に寝ることもできないんだな」
 アンガは隣で自分と同じ姿になっている女房を見た。いつも見える大きな胸は今は背中になってしまっている。
 アンガはその女房を見てまた言った。
「胸がないと燃えないな」
「我慢するしかないな」
「そうみたいだな。女房と一緒に寝ることもできないなんてな」
「辛いか」
「地獄だね」
 アンガは苦笑いで長老に答えた。
「全くね」
「そうか」
「ああ、まあ我慢するさ」
 そうするしかないからだ。彼も大人しくすることにした。
 それで彼と女房は三日の間その変わった姿のまま寝た。食うことも用を足すことも人
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