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弱い人間
第三章

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「そうだよな」
「そうだな、だからあいつはな」
「弱いからか」
「ああやって必死に空手やってな」
「そこまではいいけれどな」
「自分だけになっていていじめもしてな」 
 自分に意見する後輩達にだ。
「そうして悪いことを積み重ねていってるだろ」
「自分自身でか」
「ああ、だからな」
「これからか」
「その報いを受けるんだろうな」
「報いを受けるってな」
 それこそとだ、こう言った城太郎だった。
「あいつより強い奴にやられるっていうのか」
「そうなるか?」
 達夫も言ってきた。
「やっぱり」
「あいつより強い奴か」
「そうなるか?」
「そいつに叩きのめされてか」
「痛い目見るんじゃないか?」
「そうなるか?」
「そう思うけれどな」
 達夫の考えではだ。
「やっぱり」
「まあそうなるか、しかしな」
「しかし?」
「あいつな」
 どうにもとだ、こう言った城太郎だった。
「小学校の時物凄いいじめられたんだよな」
「そうらしいな」
「それでいじめられたくなくて空手はじめたんだよな」
「そして強くなったんだよ」
「そうか、けれど自分がいじめっ子になってるんだな」
「そうなるな」
「それじゃあ一緒だろ」
 城太郎は苦い顔で達夫に話した。
「自分をいじめていた連中と」
「そう思う、俺もな」
 達夫は険しい顔で城太郎のその言葉に応えた。
「それじゃあな」
「やっぱりそうだよな」
「ああ、けれどな」
「あいつはか」
「そうなってしまってるんだよ」
 いじめっ子、自分が嫌っていた筈の者達にというのだ。
「いじめられたくなくてな」
「二度とか」
「そう考えるとな」 
 達夫は苦い顔になった、そして自分と同じ顔になってしまっている城太郎に言ったのだった。
「あいつは強くないだろ」
「ああ」
 その顔でだ、城太郎も頷いた。
「本当に強い奴ならな」
「いじめられていたのに自分がいじめないだろ」
「そうだよな」
「そんなことするからな」
「あいつは弱いんだな」
「そうだよ」
 そうした人間だというのだ。
「俺もそう思えてきた」
「その話聞くと俺もな」
 城太郎は真剣な顔で答えた。
「そう思えてきたよ」
「そうだろ」
「ああ、弱いな」
「あいつは過去を克服出来ていないんだよ」
 いじめられていたその過去をだ。
「結局はな」
「そうなんだよ」
「それでか」
「ああ、それで自分をいじめていてな」
 そうしてというのだ。
「あいつは自分で悪い種を蒔いているんだよ」
「そしてその悪い種がか」
「何時か芽が出てな」
「その悪い芽でか」
「報いを受けるだろうな」
 そうなるだろうというのだ。
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