暁 〜小説投稿サイト〜
フルメタル・アクションヒーローズ
第12話 転校生は方言少女
[2/3]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
初のイメージをぶち壊す、男よりも男らしい女の子だったわけだ。

 夏休み中も、二学期が始まってからも、彼女は男子以上に活発に動き回っていた。
 それは別にいいことだろうし、性格的にも悪い奴じゃないとは思う……のだが、困ったところが一つだけあった。

「一煉寺ィ〜! あんた男やろ、しゃんしゃんせんかい!」
「ちょ、や、矢村、タンマッ……!」

 ――やたら俺を連れ回す、という点である。大して運動が好きでも得意でもない、俺を、だ。
 なぜかはわからないが、彼女はサッカーやら野球やら柔道やら、俺が普段関わらないようなスポーツの世界に容赦なくぶち込んで来るのだ。
 当然、俺は耐え兼ねて音を上げた。そんな俺の尻を、彼女がひっぱたく。それはもはや「お約束」だった。
 まぁ、それはそれで運動不足の解消になったんだし、よしとしよう。

 そうして、矢村は男子よりも強い女子として、その地位を高めていた。このままそれが続いていたなら、彼女の中学時代は実に充実したものになっていたに違いない。

 しかしある日、俺は彼女をやっかいなトラブルに巻き込んでしまったのだ。

 運動も勉強も中途半端でありながら、成績優秀・スポーツ万能な矢村と一緒にいる俺は、異端だったんだろう。なんの脈絡もなく、俺は出来のいい兄と比較される形で、一部の連中からいじめに遭った。
 兄貴がその優秀さで有名なのは知っていたし、弟の俺がふがいないのも事実だった。だから、俺は抵抗することなく、いじめを「一般的な世間の評価」として受け入れることにしていた。

 ――だが、矢村はそれに反対した。

 彼女は俺をいじめていた連中に突っ掛かると、全員にビンタをお見舞いしたのだ。「一煉寺は一煉寺、兄貴とはなんの関係もないやろが!」と。
 まぁ、向こうはただ俺をいじめるための話題が欲しくて、兄貴を引き合いに出しただけらしいんだけどな。
 だが、そこで連中は逆上してしまった。元々、彼らは俺のように勉強や運動で矢村に劣る「落ちこぼれ」であり、男勝りで勝ち気な彼女を快く思わない存在だったのだ。
 俺をいじめようと思ったのも、彼女を狙うと支持層が黙ってないから。だから、代わりに「八つ当たり」をしようとしていたんだ。

 連中は持っていたモップや椅子を振り上げ、矢村に殴り掛かろうとした。いくら男より強い彼女でも、数人に凶器を持ち出されたらどうしようもない。
 俺は自分の撒いた種だからということで、彼らに飛び掛かって彼女を逃がすことに決めた。
 別に、俺が殴られるのは構わなかった。どうせケンカは弱いんだし。
 それに、俺の代わりに彼女が殴られたりなんかしたら、そっちの方がよっぽど「痛い」しな。
 だけど、俺が殴られて血まみれになった時の彼女は、まるで自分が殴られたかのように悲痛な
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ