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ルヴァフォース・エトランゼ 魔術の国の異邦人
辺境異聞 10
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体から力が抜け落ち、大地に沈む。
 竜が口を開いた。
 食らいつくのか、それとも灼熱の息吹を吐くのか。

「《昏き褥に横たわり・永久の眠りにつけ・滅》」

 竜語でも、ルーン言語でもない。竜の口から神聖語が、暗黒神に奇跡を願う暗黒魔術が放たれた。
ジャイアント・センティピードは大きく痙攣すると、動かなくなった。
 死んだのだ。
 ドラゴンが使ったのは暗黒魔術【デス・スペル】。
 対象の命を一瞬にして奪う死の呪文。
 闇竜が暗黒神と関係があり、闇の魔術を行使するというセリカの説明は本当だったようだ。
 おのれの屠った大ムカデに一瞥もくれず、悠然と立ち去ろうとする。
 背後に見える大穴が竜の住処なのだろう。

「竜よ」

 その背にむかって秋芳が声をかける。
 秋芳に竜語の心得はない。だが翻訳の魔術を使ったので、相手には竜語で聞こえている。
 闇竜が翼をはためかせ、秋芳のそばに降り立った。
 その目は剣呑な輝きを帯びている。

「地を這う小さき者が、我に呼びかけるとは、不遜!」

 竜の言葉も翻訳され、人の言葉として秋芳の耳にとどく。
 竜が息をするたびに硫黄の臭いが鼻をついた。喉が大きく膨らんでいる。
 炎か。
 死の言葉か。
 いずれが放たれても無事ではいられない。

「そうだ。俺はおまえを呼んだ」
「なぜ、我を呼んだのか」
「賀茂秋芳が、黒き竜に問う。なぜ人里を襲い、奪うのか」
「獲物を狩るのに理由がいるか」
「腹が減っているのか」
「いかにも」
「ならなぜそのムカデを食べない」
「毒ある地虫をだれが口にするか!」
「毒はおまえのような竜族をも害するのか」
「笑止。毒ごときで我が身は害せぬ。ただ、不味いのよ」
「不味いか」
「不味い」
「不味いから食べないのか」
「不味いから喰わぬ」
「腹がくちくなれば人里を襲わないか」
「腹が満たされているうちは」
「腹が減っても人里を襲わないで欲しい」
「できぬ!」
「ただとは言わない」
「なんだと」
「条件を飲んでくれたら、おまえに与えられるものがある。貢ぎ物だ」
「それは、なんだ」
「賞味」
「ショウミ!?」
「おまえに美味い『料理』を食べさせてやる。その味に免じて俺の頼みを聞いて欲しい」
「料理だと!」

 竜がふたたび吠えた。
 背中に生えた闇色の体毛が大きく逆立ち、鼻の穴からは黄色がかった煙のようなものが立ち上がった。

「小さき者の小細工を我に供じるというのか! 不遜だぞ!」

 竜の怒りは今にも爆発しそうだった。

「人の料理を食べたことはないのか」
「ない!」
「料理をすれば、そこのムカデが美味くなる」
「なんだと?」

 竜が首を伸ばしてきた。その首は長く、秋芳のす
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