第五章
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マウンドでの話を終えてだった、試合再開となり。
剛力はセットポジションから一球目を投げた、すると。
そのボールはゆらゆらと揺れて落ちる、そのボールを見てだ。
バッターもバックネットの観客達もだ、驚いて言った。
「ナックル！？」
「まさか」
「剛力はナックルも投げられたのか！？」
「今まで投げたことないだろ」
「ナックル投げられたのか！？」
そのボールを見た誰もが驚いた、そして。
その思わぬボールに驚ろいたバッターは驚愕しつつバットを振ったがそのバットは空しくだった。
空を切ってだ、完全にペースを乱し。
二球目の何でもないストレートに詰まってピッチャーゴロになった、これでピンチを凌いでだ。
剛力のチームは自分達の攻撃で追加点を入れて最後はストッパーが抑えた、こうして剛力は見事ワールドシリーズ優勝という栄誉を味わったが。
その栄誉の宴の後でだ、オフで帰国した彼にだ。記者は笑顔でこう言った。
「あの試合ネットで観戦していたよ」
「そうだったんですね」
「やっぱりもう一種類持っていたね」
変化球をというのだ。
「そうしていたね」
「ずっと隠してました」
「そうしてだね」
「本当にです」
「ああしたここぞという時に投げる様にしていた」
「まさかその時が来るとは思っていませんでしたが」
それでもというのだ。
「実際に投げて」
「そうしてだね」
「抑えることが出来ました」
「そうだね」
「よかったです」
その時のことを思いだしつつだ、剛力は記者に話した。
「あの時は」
「ナックルだね」
「あのボールは難しいですが」
身に着けることも相手が受けることもだ、それに多投すれば爪を痛めることもある。何かと難しい球種である。
「それもあるって相手に思わせると」
「それだけでだね」
「こっちに有利になりますしね」
「特にああした時にいきなり投げたら」
「ペースを掴めるから」
「いいね、あれだね」
記者はにかっと笑って剛力にこうも言った。
「隠し球だね」
「そうですね、グローブの中に入れるのじゃないですけれど」
普通の隠し球とは違うがというのだ。
「こうした場合もですね」
「隠し球だね」
「そうなりますね」
「つまり君は隠し球で勝った」
肝心の時まで秘密にしていたそのナックルでというのだ。
「そういうことだね」
「その通りですね」
「勝つ為の切り札はそれだった」
ナックル、隠し球のそれだったというのだ。
「これは面白い記事になるね」
「じゃあそれで書かれますか」
「そうさせてもらうよ」
「じゃあそういうことで」
「また来年もね」
「はい、頑張っていきます」
二人で笑顔で話してだ、そしてだった。
剛力は日本でオフの間にもト
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