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第二章

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「御前自身にな」
「そうですか」
「確かに御前は生真面目でだ」
 マッテウッツィのその気質から話した。
「知識もあるしあらゆることに目を配らせる」
「問題ないのでは」
「確かに問題はない」
 レオンカヴァロはまた言った。
「それでな、しかしそれだけだ」
「それだけとは」
「だからそれだけだ」
 それに過ぎないというのだ。
「後は何もない」
「そしてそれがですか」
「下士官や兵隊の評価になっているんだ」
 彼自身へのそれにというのだ。
「そうなっているんだ」
「そうですか」
「部下は見るからな」
 その上官をというのだ。
「何しろ命に関わるからな」
「そうですね、それは」
 このことはマッテウッツィもわかった、伊達に士官学校の時から軍にいて知識を得ている訳ではない。
「私もわかります」
「そうだな、だからだ」
「私に命を預けていると」
「危ないって思っているんだ」
「それでは」
「御前自身も嫌だな」
「はい、やはり」
 その通りだとだ、マッテウッツィも表情に出して答えた。
「私にしましても」
「そうだな、しかしそれを御前自身がわからないとな」
「駄目ですか」
「ヒントはこの世界じゃいつも言われていることだ」
「いつもですか」
 マッテウッツィは首を傾げさせて返した。
「軍隊では」
「そうだ、そこに気付くことだな」
「そうすればですか」
「部下の御前への評価も変わるぞ」
「そうですか」
「その時はな」
 こう彼に言うのだった、だがマッテウッツィ軍隊ではいつも言われていることが何なのかどうにもわからなかった。そして。
 彼の所属する部隊にPKO、国際平和維持活動の任務が来てだった。彼もまた任務先である南スーダンに行くことになったが。
 ここでだ、下士官や兵達はまた話した。
「大丈夫かね、マッテウッツィ少尉」
「だよな、あの人だとな」
「果たしてどうなるか」
「部下になると大変だな」
「小隊長じゃなくてよかったな」
 新任の少尉がよく任官される役職だ。
「まだな」
「大隊付士官か」
「まあそこなら問題ないか」
「部隊を率いていないからな」
「それならな」
 下士官や兵達はマッテウッツィが直接部隊を率いる立場にないことにほっとしていた、マッテウッツィはこの話も聞いて共に南スーダンに行くレオンカヴァロに対してまた話をした。
「また、です」
「ああ、言われているな」
「部隊を率いなくてよかったとか」
「随分な言われ様だな」
「はい、けれどですね」
「それが御前への評価だ」
 紛れもないそれだというのだ。
「そして軍隊で周りの評価はな」
「そのまま正しい評価ですね」
「そうなるからな」
 だからだというのだ。
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