第四章
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「人間として正しい教育を受ければな」
「立派な人間になれる」
「そういうことだ、私も実はな」
博士もだ、助手と同じことを言った。
「ここまでなってくれるとは思わなかった」
「そうでしたか」
「立派な人間になって欲しいと思っていたが」
「あそこまで高潔な人間になるとは」
「思わなかった、もう彼は人の手で生み出された人間ではなく」
「立派な人間ですね」
「むしろ私達以上のな、もう彼に教えることはない」
最早、というのだ。
「一人立ちもしている、ではな」
「ここからはですね」
「彼の願う様にしてもらおう」
「学問を究めて」
「修道院で己を磨いて生きていってもらおう」
こう言ってだ、ヴィクターの望む様にしてもらった。こうしてヴィクターは修道院に入ったがそこでだ。
当初は傷だらけの巨体を驚かれたがだ。
その深い学識と人間性、気品を見られてだ。修道院の者達に認められた。
「記憶を失くした流浪者だったというが」
「実に見事な方だ」
「あれだけの方は滅多にいない」
「しかも向上心が凄い」
学び生活を慎み神に近付いているというのだ。
「あれだけの方ならばな」
「これからもどんどん素晴らしくなられる」
「我々も負けていられない」
「あの方の様にならねば」
何時しか他の修道僧達の手本になっていた、そうしてだった。
修道院長になりそこから大司教にまでなった。その出自は博士と助手以外は誰も知らなかったが。
ローマ教皇もだ、彼がローマに来た時に笑顔で言った。
「貴方のことは聞いています」
「猊下も」
「はい」
口数の少ないヴィクターに笑顔で応えた。
「非常に素晴らしい方だと」
「いえ、私はまだ至りません。それに」
彼自身その出生を知らないがこう言った。
「博士の基に入るまでの記憶もです」
「なかったのですね」
「はい」
そうだというのだ。
「それ以前の私がどういった者か」
「私も知りません、神と主だけがです」
教皇は己の前で跪き語る彼に話した。
「知っています、ですが」
「それでもですか」
「今の貴方は神と主に見られ」
そしてというのだ。
「祝福されていることは間違いありません」
「だからですか」
「そうです」
まさにというのだ。
「ですから」
「それでは」
「今の貴方なのです」
神が見ているのはというのだ。
「過去の貴方ではありません」
「そうなのですか」
「ですから」
「今の私をですか」
「誇りそしてです」
「これからもですね」
「神を信じ学ぶのです」
そうせよというのだ。
「わかりました」
「そうですか、それでは」
「これからもお願いします」
教皇はヴィクターに優しい声で告げた、そしてヴィクターも教皇の言葉に
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