暁 〜小説投稿サイト〜
転生とらぶる
ペルソナ3
1890話
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「ワン、ワン!」

 長鳴神社の境内で、俺の姿を見つけた犬が嬉しそうに吠える。
 だが、いつもであれば真っ先に俺の方に向かって駆け寄ってくるのだが、今回に限ってはそうでもなかった。
 ……まぁ、その気持ちも分からないではない。
 俺以外に、ゆかりの姿がそこにあったのだから。
 一応他の連中も誘ったのだが、有里は何やら細々とした用事があるとかで、真田は部活が、桐条は生徒会長としての仕事があるからと、それを諦めたのだ。
 そんな訳で、ゆかりと一緒に長鳴神社に来た訳だ。

「ワフ、ワフ……ワン!」

 犬は、俺の近くで足を止め、ゆかりの臭いを嗅ぐようにし……やがて安心出来る相手だと判断したのか、俺ではなくゆかりの周囲を走り回る。
 これは……やっぱり犬がオスだというのも関係しているのか?
 人間だけではなく、犬まで惑わせるフェロモンを発するゆかり、凄いな。

「……ちょっと、アクセル。この犬を何とかしてちょうだいよ!」

 危害を加えられている訳ではないのだろうが、それでもこうして自分の周囲を走り回られると、何か思うところがあるのか、ゆかりがそう言ってくる。
 うん、このまま困惑しているゆかりを見ていても面白そうだが、本当にそうすれば、後で色々と不味い事になりそうだな。
 取りあえずそう判断し、今は犬に構われて戸惑っている様子のゆかりを助ける事にする。

「ワン、ワン! ワン!」
「あははは。ちょ、ちょっと舐めないでよ。くすぐったいから!」

 犬もゆかりは遊べる相手だと判断したのか、近づいてゆかりの手を舐めていた。
 勿論この場合の舐めるというのは、侮るといった意味の舐めるではなく、物理的な意味での舐めるだ。
 ……月光館学園にいるゆかりのファンがこの光景を見たら、羨ましさで爆発するんだろうな。
 そんな事を考えつつ、俺は空間倉庫から以前買ってあったドッグフードを取り出す。
 最高級品――あくまでもスーパーに売ってる奴でだが――という訳ではないが、そこそこに高級なその缶詰の蓋を開けると、そこから漂う食欲を刺激する匂いに反応したのだろう。
 ゆかりと遊んでいた犬はすぐにこっちに向かってくる。

「ワンワン! ワフゥ!」

 早く早くと、促される。
 やっぱりこの犬って何気に食い意地が張ってるよな。
 ここ最近は餌に困ってたのか?
 俺も色々と忙しくて、神社からは少し足が遠のいていたからな。
 ともあれ、開けた缶詰を地面に置くと、犬はすぐにそれを食べ始めた。

「全く、色気より食い気ね」
「……色気ってな。いやまぁ、これ以上何かを言うと俺の方に被害が来そうだから、何も言わないが」

 犬がゆかりに色気を感じていたら、それはそれで色々と不味い事になりそうな気がするんだが。
 ともあれ
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