第三章
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「その人魚は」
「そうよね、けれど」
「妖怪はいないんだよね」
「いないわよ、ほら淀川もね」
淀川を見たまま言う果補だった。
「平和なものよ、もう釣りをする人もいないし」
「ああ、もう誰もいないね」
「静かなもので」
夜釣りは危ないと思ってか夕方にはもう釣り人はいなかった。
「人魚なんてのもね」
「いないんだね」
「絶対にね」
この言葉は笑って出した果補だった、だがここで。
淀川の水面を何かが跳んだ、それは一瞬鯉かと思った二人だったが。
その魚は頭が人間小さな子供のものだった、果補も裕介もその魚を確かに見た。それでだった。
果補は呆然としてだ、裕介に言った。
「いたわね」
「そうだね」
こう答えた裕介だった、見れば彼も呆然となっている。
「本当に人魚が」
「そうよね、まさかって思ったけれど」
「本当にいたんだ、人魚」
「嘘みたいよ、けれど確か」
ここでこう言った果補だった。
「あの人魚見たら運がよくなるのよね」
「うん、そうらしいよ」
「じゃあ私運がよくなるのかしら」
「それで運がよくなったらね」
この要素が加わればとだ、裕介は果補に話した。
「その分ね」
「私も調子が上がるのね」
「運も実力のうちっていうし」
「その分の実力がついて」
「勉強もテニスもよくなるからね」
「だといいわね、まあとにかく人魚は本当にいて」
そしてと言う果補だった。
「見られたわね」
「そのことは確かだね」
二人で話してだ、夕方の赤と銀色に輝く淀川の水面を見ていた。人魚が撥ねた水面は今は静かなものに戻っていた。
そしてその人魚を見てからだ、果補は実際に運がよくなった。
テニスの試合中急に追い風になったりテストで特に覚えていたり力を入れて勉強をしていたところが出てだった。
どちらも調子が上がった、それで裕介に学校で昼に一緒に食堂でお昼御飯を食べつつ言ったのだった。
「私最近運がよくて」
「試合勝ったらしいね」
「あとこの前のテストもね」
それもというのだ。
「知っている場所も出てね」
「その分成績が上がったんだ」
「十番になったわ」
目標を達成出来たというのだ、十番以内になるというそれを。ちなみに裕介は今回でクラスで二番だった。
「よかったわ」
「運の要素って大きいね」
「そのことも実感してるわ、そしてね」
「その運はだね」
「あの人魚を見たからよね」
それでと言う果補だった。
「そうよね」
「うん、見て運がよくなったからだよ」
「試合もテストもよくなった」
「そうだね。何か人間努力は大事だけれど」
「それは絶対にしてもね」
「何か運の要素ってね」
「馬鹿に出来ないわね、運で結構変わるのよね」
果補は自分のことから実感
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