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ルヴァフォース・エトランゼ 魔術の国の異邦人
シーホーク騒乱 8
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 おびただしい量の海水をしたたらせて陸に上がった魔鋼鉄のゴーレムはふたたび暴れ狂う――ことはなく、すぐに動きを止めた。

「……?」

 左膝の関節部分に容赦なく魔剣を突き刺し、ねじり斬ると、バランスを失ったゴーレムが他愛もなく倒れる。

「中の人は生きているみたいだが……」

 胸部のハッチに魔剣を押し当て、強引にこじ開けると海水とともにひとりの男――カルサコフが流れ出てきた。

「大量に水を飲んでいるな、このゴーレムには水中でも活動できる機能はなかったようだ」

 気を失ったカルサコフを警備官に引き渡す。彼らはすぐに【マジック・ロープ】と【スペル・シール】でカルサコフを無力化し、連行する。

「あの男。いったい何者で、どうしてこのような凶行を働いたのか、できることならわたくしみずから聞き出したいものですわ」

 ウェンディは形の良い唇を噛みしめ、口惜しげな表情を浮かべる。

「やつには拷問という付録つきの取り調べから、処刑台直行コースが待っていることだろう。俺たちが気にかけることはないさ」
「そうですけど……」

 拘束され連れ出されるカルサコフの姿を見送っていた、その時、異変が起きた。
 カルサコフの上腕部に彫り込まれた紋様、短剣に絡みつく蛇を描いた漆黒のタトゥー。その蛇がのたうち、闇の触手となってカルサコフにからみついたのだ。
 漆黒の蛇。霧のように実体のないものながら、絶対的な存在感をもった闇の塊。
 それは瘴気。
 闇に触れたカルサコフの皮膚が見る見るうちに変化していった。ぷくりぷくり、ぶくりぶくりと泡が膨れ上がるかのように皮膚がめくれ、肉がはじけ、ただれ落ちた。
 筋肉質だった長身はぶざまに膨れ上がっていく。
 それは、人であった面影を完全に失った生き物だった。
 樽のような胴体には数えきれないほどのいぼがあり、じゅくじゅくと正体不明の、悪臭を放つ、液体を分泌している。
 腐りかけた縄をよじり合せたような腕とも触手ともつかないものが三本、身体の周囲に生えていた。
 頭の位置はルイーツァリよりは低い位置にあるが、それでも並の男の倍ほどの高さにあり、足の先端は木の根のようにいくつも分かれ、わさわさとおぞましく蠢いていた。
 たったひとつ、頭だけがもとの形をとどめているのが、哀れであり、恐ろしくもある。
 だが狂気と妄執に囚われていても強い意志の宿った瞳は黒く濁り、淀んでいた。
 半開きになった口もとじからは、とめどなく薄桃色の液体がしたたり落ちている。
 それは――。
 それの名前は――。

「動的霊災!?」

 霊災。それは万物に満ちる霊気が極端に偏向し、五気と陰陽のバランスを崩すことで発生する霊的な災害のこと。動的霊災とは瘴気が実体化し、物理的に影響をおよぼすまで進行
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