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ルヴァフォース・エトランゼ 魔術の国の異邦人
シーホーク騒乱 7
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惑通りに、徐々に徐々にせまい路地へと追い込まれていく。
 だが秋芳にもシーホークの土地鑑はある。だからこそカルサコフを倉庫街におびき寄せて油をまいて火を点けることができたのだ。
 それがなぜ、みずから不利になる場所へと誘導されるのか?
 秋芳にはまだ一計があった。
 行き止まりに、たどり着く。

「おしまいだ、ウラー!」

 ルイーツァリによる全力の体当たり。
 前方を塞ぐ壁と後方から迫る鉄塊にはさまれ、押し潰される寸前――。

「《大いなる風よ》」

 秋芳は跳躍すると同時に【ゲイル・ブロウ】の呪文を一節詠唱で唱え、地面にむけて放った。

「なんだと!」

 巻き起こる猛烈な突風が秋芳の身を木の葉のように宙に舞わせ、放物線を描いてルイーツァリの頭上を跳びこした。
 目標を失った鉄の巨体は壁に直撃し、派手な衝突音を響かせる。
 壁一面に蜘蛛の巣状の亀裂が走る。

「ちぃっ、味な真似を!」

 これではまた追いかけっこの繰り返しだ。
 カルサコフは焦燥は駆られた。
 だが、秋芳は遁走せず、ふたたび呪文を唱える。

「《奔放なる嵐よ・止むことなく・猛り狂え》!」

 秋芳の手から爆発的な風が生まれ、ルイーツァリに放たれる。

「なんだ、いまさらこの程度の風……」

 局所に集中する突風。それだけなら【ゲイル・ブロウ】とおなじだ。
 しかし異なる点があった。

「なぜ止まぬ!? いや、止ませぬ?」

 【ゲイル・ブロウ】によって生じる強風は一陣の風。ひと吹きで終わる。だが秋芳の手から放たれている指向性の強風は轟々と吹きすさび、止む気配がない。
 魔術公式と魔術文法に手をくわえることによってルーンが引き起こす深層意識の変革結果を従来のものとは異なるようにする。
 呪文の改変というやつだ。
 秋芳は一瞬で終わる【ゲイル・ブロウ】の効果に持続性を持たせた。
 だが即興ゆえかなり粗い♂変である。
 呪文の発動中、つねにマナを消費し続ける。

「……たいした魔力容量だな。だが無意味なことを」

 駆け流れる強風は風の壁となってルイーツァリを圧迫している。だがこの魔鋼鉄のゴーレムの重量と剛力をもってすれば吹き飛ばすことはおろか押し倒すことすらできない。せいぜい歩みを遅くする、進行速度を落とすことくらいだ。

「なにかの時間稼ぎか?」

 だが周囲に援軍らしき気配は感じられない。

「なぜだ、なぜ逃げずにこのように消耗の激しい真似をする? 最期の悪あがきか?」
 
 一歩、一歩、気流に逆らい秋芳ににじり寄る。

 一歩。

 みしり。

 一歩。

 みしりみしり。

 一歩。

 みしみしみし――。

 もう一歩。
 もう一歩の距離で
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