暁 〜小説投稿サイト〜
東京レイヴンズ 異符録 俺の京子がメインヒロイン!
邯鄲乃夢 4
[3/13]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
ない。
 おもに今昔物語に登場するのが前者で宇治拾遺物語に記されているのが後者だ。
 ――家の中に人なき折は、この式神をつかひけるにや、人もなき(しとみ)を上げ下げし、門をさしなどしけり――。
 稀代の陰陽師安倍晴明が自在に式神を使役し、京都の一条堀川戻り橋に十二神将という式神を隠していたのは有名な話だ。
 その符以って咒唱えれば式神と成る。

 原理は簡単だが実践するのは容易ではなかった術だが、夜光は簡易式符という、あらかじめ式神作成・操作の術式が組み込まれているベーシックスタイルの呪符を作成することでそのハードルを大きく下げた。
 たったいま京子がもちいたのは簡易式符にたよらない、古い術だ。

「天国の演出とはべつに地獄のほうも式神で演出してみようと思うの」

 京子は花の貌に美しくも危険な笑みを艶麗とよぎらせた。





「兵士たちに疲労と望郷の思いがつのりはじめている。海上陸路を敷いて一斉攻撃に出る前に、いちど決定的な勝利を収め、士気を上げる必要がある」

 そう判断した張弘範は弟の張弘正に命じて崖山の近くにある宋の水源地をふたたび強襲する作戦を立てた。
 あわよくばそこを足掛かりにして陸からも攻撃したいところだったが、戦う前から頓挫してしまった。
 道を進むことができないのだ。
 禁道則不能進。
 道を禁ずれば、すなわち進むことあたわず。
 秋芳のほどこした持禁の術で進路を妨害していたのである。
 障害物などひとつもないというのに、どうがんばっても前に進めない。一定の地点からは足が動かなくなる。

「方臘どのの法力でどうにかならぬか」
「かなり強力な呪が込められているので拙僧ひとりでは……」
「例の強力な助っ人とやらはまだ来ないのか?」
「一〇日以内には到着するかと」
「ええい、ならば近隣から方士、僧侶、行者、なんでもいいから呪術者を呼んで解呪にあたらせろ。人選と指揮は方臘どのにまかせる」
「ははっ」

 こうして多少なりとも霊力のある呪術者たちが五〇人ほどあつまり、秋芳のかけた呪の解除にとりかかったのだが、遅々として進まない。
 その間にも秋芳と京子は式神を打ち、元軍の士気をくじくよう、様々ないやがらせをしかけていた。





 ある日のこと陣中に熟麺舗(うどん屋)があらわれた。近隣の住民が大量の兵士たちを相手に商売っ気を出したのだろうが、なんと時間内に十杯食べると無料。それどころか銀一両の賞金を出すという。健啖家の兵士たちがこぞって挑戦するがなかなか完食できた者はいない。
 まもなく腹痛や下痢に悩まされる兵士たちが急増したので方臘をはじめ医術に心得のある者が診てみれば広節裂頭条虫、いわゆるサナダ虫に寄生されているではないか!
 どうやらうどんに虫を仕込ん
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ