暁 〜小説投稿サイト〜
東京レイヴンズ 異符録 俺の京子がメインヒロイン!
邯鄲之夢 1
[3/12]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
生は陰陽V種の資格者、いわゆる準陰陽師に近い権利が特別に与えられ、機関の最高責任者の責任下。たとえば授業内などでは特別に甲種呪術の使用が認められている。
 もっとも秋芳も京子も普段からおかまいなしに呪術を使っているが、それでも人目をはばかり、塾の敷地外で使用する時は周囲に気をくばっている。
だが今はその必要はない、なにせここは現実の世界ではないのだ。

「以水行為不沈、疾く」
「以水行為不沈、急急如律令(オーダー)

 水行を以て不沈と為す、浮かべ。
 目標を水に沈まぬようにし、濡れることすらさせない水行の術。
ふたりはフィギュアスケートの選手が銀盤を舞うように海上をすいすいと軽快に駆けて、術を飛ばし合った。竜や麒麟、鳳凰などの瑞獣を象った無数の水流水塊が乱舞し、時にみずからを乗矯術で浮かせて宙を飛ぶ。
 これらは夢の中だからできる芸当というわけではない、秋芳はもちろん京子もすでに呪術をもちいてこのくらいの遊び≠ェできる域にまで高まっているのだ。

「楽しいな。やはり呪術は実践してなんぼだ、一年でももう少し実技の授業を増やせばいい」
「そうよね、あたし天馬や春虎を見て思ったんだけど、甲種呪術に対して妙な苦手意識を持ってる子ってわりといる気がするのよ。そういうのをなくすためにも、こういうお遊びって必要だと思う」
「ああ、いつだったかの簡易式の紙相撲や射覆(せきふ)のあてっこみたいにな」
「隠形してかくれんぼしたりね」
「かくれんぼ……、いっそ鬼役は本物の鬼を使役してやるか」
「いや、さすがにそれは危険すぎるでしょ」

 急に京子の表情がかたくなり、一瞬おくれて秋芳も眉根をよせる。
 剣呑な気を感じる。それも生半可なものではない、流血をともなう破壊と暴力、死の気配を濃厚にただよわせる気配。
 だが霊災や呪術の類ではない、これは――。

「軍気だ」

 人が人を傷つけ、殺そうとする殺意の衝動。それがぶつかり合っているのを感じる。
 すぐ近くで多くの人が戦っているのだ。
「いってみよう」
「ええ」





 ?牛水井。地面に穿たれたすり鉢状の斜面には井戸に降りて行くため螺旋型の歩道が作られており、その形状がカタツムリを思わせることからこう呼ばれている。
 周りを海に囲まれたこの土地では地下水を汲み取るにも、このように深くまで井戸を掘る必要があるからだ。
 その貴重な水源を守る守備隊は敵の奇襲にあい壊滅の危機にひんしていた。
 突如として四方に喚声がわきおこり、間断なく矢の雨をあびせられたのだ。
 反撃するいとまもなく一人、また一人と味方の兵士が倒れていく。
 守備隊を率いる王平の掲げた盾には無数の矢が突き刺さり、重くなる一方だ。
 ぐらり、と身体がかたむいた。矢傷を受けた右肩を中心
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ