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ルヴァフォース・エトランゼ 魔術の国の異邦人
シーホーク騒乱 2
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集陣形も広範囲破壊呪文の的にしかならない。これはまぁ、わかる。だが魔術を使えない兵士が敵魔導兵掃討後の拠点制圧や兵站活動や後方支援にしか役に立たないとか、敵の魔導兵を相手に一般兵が立ち向かわなければならない状況というのは捨て駒か敗北が決定した時だけと書いてあるが、はたして本当にそうだろうか?」
「ア〜キ〜ヨ〜シ〜ッ!」
「そもそも破壊魔法をもちいた個人レベルの戦闘にこだわりすぎだ。召喚呪文を使えば戦力を増やせるし、幻術を使えば容易く伏兵でき、魅了や混乱で同士討ちを誘えて、火と風を起こすだけで火計は成功する。それなのにわざわざ魔術師が最前線でドンパチ魔術バトルする意味なんて――」
「……《雷精よ・紫電の衝撃以て・撃ち倒せ》」

 か細い雷光が秋芳の鼻先をかすめて壁にあたって弾けた。

「あぶないじゃないか」
「主の問いを無視するからですわ、あてなかっただけでも感謝なさい。聞きましてよ。あなた、独学で呪文を習っているそうですわね」
「ああ、入学までに少しでも多くのことを知りたいと思って。初歩の初歩のしか使えないが」

 汎用の初等呪文の多くは攻性系の魔術が占めているが、学士生が通常の授業範囲で習得するような攻性呪文は、せいぜい相手を気絶させる【ショック・ボルト】、目を眩ませる【フラッシュ・ライト】、突風で相手を吹き飛ばす【ゲイル・ブロウ】などの殺傷能力が低い術ばかりだ。
 グレンの指導は基本的に学院のカリキュラムに沿って進んでいるため、秋芳もこのみっつの呪文の習得からはじまった。

「喜びなさい、あなたが学院に入るよう手配しておきましたわ」
「おお、それはありがたい! だがまだ学費のほうが……」
「出世払いでかまわなくてよ。逆に言いますとそれなりの働きをしてもらってからでなくてはお国への帰還はゆるしませんことよ」
「もちろんだ、受けた恩はかならず返す」
「けっこう。ところであなた、今の【ショック・ボルト】の呪文の詠唱節を四つに区切るとどうなるか、ごぞんじかしら?」

 とっておきの秘密を教えたくて仕方がないという顔だ。

「ああ――」

 詠唱節についてのあれこれはグレンから学んで知っていた。そしてそれが教科書には記載されず、普通の講師は教えないということも。

「ああ、いや知らないな。俺はまだ初歩の初歩しか学んでないんだ。そういう応用編も後々教科書に出てくるのかな」

 だがグレンから教えを受けていることは極秘だ。国の許可なく魔術を教えることは禁止されている。 まして営利目的で教えているとあっては依頼したほうも受けたほうも厳罰を受けることとなるだろう。
なので秋芳は知らないふりをする。

「ふふん、なら特別にこのウェンディ・ナーブレスが教えてさしあげますわ。《雷精よ・紫電の・衝撃以て・撃ち倒せ》」
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