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東京レイヴンズ 異符録 俺の京子がメインヒロイン!
ある夜のふたり〜月語り〜
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 半径は地球の四分の一。重力は六分の一。表面温度は最高で一一〇度。最低で零下一七〇度。
 時に寺山修司が『トラコーマにかかったかのような』と表現するほど赤く、時にレイ・ブラッドベリが『ミントを盛りつけたような』と表現するほど青い。
 ジュール・ヴェルヌが砲弾で周回軌道を目指し、ハーバート・ジョージ・ウェルズは反重力物質で着陸を成功させた神秘の天体。魅惑の衛星。

 月。
 
 湖面に白い月が浮かんでいる。
 天上の月を地上の水が鏡となり映しているのだ。
 日本や中国には月を愛でる風習が昔からあり、日本では縄文の昔からあったという。
 平安時代では貴族などの間で舟遊といって、月を直接見るのではなく船などに乗り、水面に揺れる月を見て楽しむ宴がひらかれた。杯や池に月を映して楽しんだのだ。
 なんとも雅なことである。
 それを現代に再現して月見を楽しむ者がいた。
 アマゾン川流域に生息している世界最大級の葉をもつ水生植物オオオニバス。人が乗れるほどの大きな葉をしたその植物よりもさらに巨大な蓮の葉が水に浮かんでいる。
 自然界にはこのように巨大な蓮は存在しない。木行符によって、呪術によって生じた蓮の葉だ。
蓮の上には料理の盛られた膳と酒の入った瓶子と盃。ススキの入った花瓶。そして二人の男女が乗っていた。
 賀茂秋芳と倉橋京子だ。

「――『竹取物語』には月をながめるかぐや姫を(おうな)が注意する場面があり、『源氏物語』にも同じようなくだりがある。月見を楽しむと同時に忌む習慣があったのではといわれる。……なぜだろうな」
 酒に満ちた盃に映った月を愛でながら、ふと浮かんだ疑問が秋芳の口から出た。
「あんまり綺麗だから、逆に怖いと感じちゃったんじゃないの? それにほら、大きな満月って夜空に開いた穴みたいに見えない? なんだか別の世界へ通じる扉みたいで、ちょっと不気味。向こう側からなにかが出てきそう」

 水面に映った真円の銀盤をながめている京子がそう答える。

「想像力が豊かだな。京子なら幻術も巧みそうだ」

 いわゆる幻術には二種類ある。本来その場にないものを立体映像のように作り出すタイプのものと、対象の精神に働きかけて、その者にしか見たり聞こえたりできない幻を知覚させるタイプのもで、特に前者は術者の『どんな幻を創るか』という、想像する力。イマジネーションの強さが重要になってくる。

「そう言えばあなたからはまだ幻術を教えてもらってないわ」
「正直苦手なんだよな、こと幻術に関しては俺よりも笑狸のほうがずっと上手く使えるぞ」
「まぁ、あの子は本物の化け狸だものね」

 ここは都内某所、かつて総理大臣を務めたこともある高名な政治家の別邸の敷地内にある日本庭園の中の池だ。
 今夜は後の月見、十三夜。秋芳と京子は当
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