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東京レイヴンズ 異符録 俺の京子がメインヒロイン!
まぼろしの城 3
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。というのが倉橋家の考えなのだ。服装はもちろん、言葉つかいから作法まで、相対する人間に与える心的影響のことごとくを意識するよう、ひいてはそのように意識することによって己を律することの重要さを、幼少の頃より叩き込まれているのだ。

「でもさ、同じ時間、同じ量の訓練をしても人によって差が出てくるでしょ。持って生まれた才能って、やっぱあるよ。そんなの不公平だと思わない?」
「まぁ、目指す場所は同じでも、だれもが同じスタートラインから出発。てわけにはいかないってのも事実だわな」
「でしょ? 秋芳君がうらやましいよ、古い呪術の血筋に生まれて、名門の賀茂家の養子になれたなんて、生まれも育ちも僕とは大ちがいだ」
「……ちょっと天馬、いい加減に――」
「俺はおまえがうらやましいけどな」
「え? なんでさ、なんで秋芳君が僕をうらやましがるの?」
「天馬には両親の思い出があるだろ? 俺にはそれがない。まったくない。母親は俺を生んですぐに死んじまったし、もの心ついた頃には賀茂の家に養子に出されて父親との交流なんてほとんどなく、その父も早くに死んだ。賀茂家で育ったと言うが、ガキの時分から山にこもって修行修行の毎日だったからな。いわゆる『家庭』の記憶なんてないんだ。同じ年頃の子が家族と一緒に食事したり遊園地に行ったりしてるのを後から知って、そういう生活に憧れたもんだ。天馬はどうだ? そういう家族の交流ってあったか?」
「うん……、父さんも母さんもいそがしかったから家族旅行とかはなかったけど、たまに仕事場に遊びに行ったりしてたっけ……」

 天馬の脳裏に幼い頃の記憶がよみがえる。母にお願いして試作段階の式神を使わせてもらったことがあった。あの蜘蛛の形の式神はなんという名だったか――。

「あと遊んだ記憶もないな。滝に打たれ、山々を駆け、真言や祝詞をおぼえ、唱える毎日……。友達といっしょに遊んだり、アニメ見たりゲームしたりしてる同い年の連中がうらやましかったよ」

 ふたたび天馬の脳裏に記憶がよみがえる。誕生日にもらった携帯用ゲーム機。当時流行ったゲームソフトもついてきた。
「俺は生まれてから十余年を修行に費やし、ありとあらゆる娯楽を犠牲にして今の力を手に入れたんだ。これってそんなに不公平か?」
「…………」
「俺にないものを天馬は持ってるし、天馬にないものを俺は持ってる。みんなそうだろ?特別なものなんてなにもないってことに関してはだれもがほとんど同じなんだ。 だれもが一長一短のある個人に過ぎない。生まれついての稀有な才能だの秀でた能力だのなんて、香辛料みたいなものさ。あれば料理の味が引き立つが、それだけで料理全体の出来を左右したりはしない。今できることだけをすればいい」
「そうよ天馬。不平や愚痴を言うヒマがあったら努力するのが大切よ。……ま、今のあ
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