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東京レイヴンズ 異符録 俺の京子がメインヒロイン!
幼女伝
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そしんでいる。
 夏目には昔からある噂がついて回っている。それは現代陰陽術の祖にして東京に空前の霊的災害。霊災を起こした張本人である土御門夜光の生まれ変わりだという噂だ。
 そのため夏目は夜光を盲信する一部の過激な思想の者達からつけ狙われているのだ。
 そして春虎は土御門家に伝わるしきたりで、夏目に式神として仕えている。だからこそ主たる夏目を守るため、鍛錬をおこなっている。

「おいおい、きのう今日こっちの世界に入ったやつとくらべてくれるなよ」

 これにはさすがに苦笑する。春虎は霊力こそ常人離れした大きさを持つが、最近まで陰陽師と縁のない普通の人として暮らしてきた。呪術の知識も技術もからっきしなのだ。
 対して秋芳は幼少の頃から山野を駆け、寺に篭もり、修行修行の毎日をすごしてきた。
 京子にしても似たようなもので、日常的に呪術の手ほどきを受けて育っている。

「今、あいつに必要なのは呪術に関する最低限の知識。そして霊力を呪力に変換する技術であって、経
験は二の次三の次なんだがなぁ」
「そうよねぇ、この前の小テストも散々だったし」
「ああ、また夏目にどやされてたな」

 顔を見合わせてため息をつく。

「話しは変わるが、今日はこれからどうするんだ? ヒマなら映画でも観に行くか?」

 言いながら軽く抱きしめ、耳朶を噛むようにキスをする。

「ンっ! ん…、ごめんなさい。今夜は家の用事が、お祖母様との約束があるの」
「そうか、わかった。じゃあせめて下まで一緒させてくれ」

 京子は陰陽塾の塾長である倉橋美代と共に車で登下校している。

「ええ、下まで一緒ね」

「ところで秋芳君、あの噂知ってる」

 一階ホールでわかれる時、京子が唐突に聞いてきた。
 幼い少女の幽霊が、渋谷の街をさまよい歩いている。
 最近そのような噂が流れているというのだ。
 いわく、両親が離婚して父親のもとで暮らしていたのだが、母親が恋しくなり、独り母に会いに行く途中で事故に遭い、死んでしまった。
 そして自分が死んでしまったことに気づかず、今も母のいる家を探して街をさまよい歩いているのだが、迷子の少女だと思って下手に声をかけた者は、その少女と共に永遠に街をさまようことになるのだという――。

「ね? なんか、いかにもそれっぽいでしょ?」
「さまよう少女の霊、か……」
「あら、なにか心あたりでもあるの?」
「いや、そうじゃない。ただ前にそういう感じの動的霊災を降したことがあってな」
「どんな霊災?」
「碓氷峠の撞木娘(しゅもくむすめ)

 碓氷峠の撞木娘。
 江戸時代の妖怪カルタなどに描かれる遊女の妖怪。
 撞木というのは寺の鐘を叩くT字型をした仏具で、かつて京都にはT字路をした造りの撞木町という
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