第6話 流れ着いた先
[1/3]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
闇夜に包まれた、静寂の中。
幼子達の寝息に紛れて響き渡る、苦悶の声を――太?は、敏感に聞き取っていた。身を起こした彼の隣には、寝静まったコロルとケイ、そして……悪夢にうなされるシンシアが寝そべっている。
やがて目を覚ました彼女は、自分を見つめる太?の視線に気づき、恥じらうように目を背けてしまった。彼にとっての自分は「妹」だが、自分にとっての彼は「異性」なのだ。
「……ごめんなさい、起こしてしまって」
「元々眠れなかったんだ、別に構わない。……怖いよな、やっぱり」
太?はそんな彼女の黒髪に指を絡ませ、労わるように頭を撫でる。全てに絶望し、怯えていた1年前からずっと、彼はこうして孤独な少女を慰めてきた。
――母を奪われ、故郷を奪われ、命を狙われ。ただシルディアス星人に生まれただけの彼女は、募る悲しみを少年にぶつけるしかなく。生まれ持った鋭利な爪で、何度彼を傷つけたかわからない。
それでも太?は、決して抵抗することもなく。彼女の怒りも悲しみも、その身で受け止め続けてきた。赤い服の下には今も、痛ましい生傷が隠されている。
そうまでして自分を守ろうとする、彼の胸中がわからないほど、シンシアは子供ではなく。そうと知って、悲しみを堪えられるほど、大人でもなかった。
母星と家族の仇であり、自分の恩人でもある。そんな彼に、シンシアが悲しみの爪を振るわなくなったのは、この星に来てから半年以上が過ぎてのことだった。
――彼女がどれほど例えようのない悲しみを、やり場のない怒りをぶつけても。傷つけても、彼は決して少女に光刃を向けることはなく。いつだって、傷だらけの地球人の腕で、優しく少女の体を包み込んで来た。
その腕は、シルディアス星人の膂力に比べれば脆弱で、シンシアがその気になれば簡単に折れてしまうというのに。それでも彼は恐れることなく、ただあやすように、彼女に寄り添い続けてきたのだ。ヒトのものではない、異形の少女に。
その献身に、次第に心を溶かされ。やがて彼女は、彼なしではいられなくなってしまっていた。それが異性への欲求であると、少女自身が悟ったのは、つい最近のことである。
全てを奪われ、悲しみの中で生かされてきた彼女は、この銀河の果てまで流された今になって――ヒトらしい感情を得るに至ったのだ。
「……」
やがて。太?の掌から伝わる甘美な温もりに、甘えるように。シンシアは顔を背けたまま頬を染め、吐息を漏らす。彼に貰った宝物――淡い桃色の花飾りを、胸に抱いて。
――ずっと、こんな時間が続けばいいのに。誰にも脅かされることなく、こうして暮らしていられればいいのに。そう願うたびに、昼間に突きつけられた「現実」が、彼女の涙を誘う。
毛布に染みる雫を一瞥した太?が、そっとシンシアの背に身を寄
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ