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赤き巨星のタイタノア
第1話 救世主、来たれり
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ートル。その光景を目の当たりにした仲間達が、悲痛な声を漏らした。
 黄色い機体に乗る男性パイロットは、口惜しげに歯を食いしばり。青い機体に乗る女性パイロットは、瞼を閉じ現実に目を伏せる。

「そ、んな……! こんな、こんなこと……! お嬢様に、お嬢様になんて報告すればッ……!」

 通信も途絶え、ノイズばかりが響く中。一際強い悲しみの中にいた、女性パイロットの慟哭が――この宇宙に轟いた。

「……威流ゥウゥウッ!」

 だが、その叫びが届くことはなく。
 ――地球守備軍所属、コスモビートル隊パイロットの日向威流(ひゅうがたける)は、この日。

 最後まで、仲間達と共に帰投することはなかった。

 ◇

 ――その頃、時を同じくして。

「……!」

 蒼い長髪を靡かせる、ある1人の少女が。深き森に包まれた祭壇の上で、ハッと顔を上げていた。
 豊かな森と清らかな水で満たされた、この惑星の中で――彼女は天を仰ぎ、翡翠色の瞳を細める。

 やがて、彼女の周囲に控えていた「侍女」達が、どよめきと共に駆け寄って来た。この星の平和と安寧を司る「巫女」の異変に、不穏なものを感じ取ったのである。

「ルクレイテ様!? いかがなされましたか!?」
「まさか、あの大怪獣がついに……!?」

 彼女達は皆、不安げな表情で「巫女」の少女の様子を伺う。もしや、かつてこの星を襲った「災厄」が、再び迫っているのでは――と。

 しかし、その一方。
 ルクレイテと呼ばれた当の「巫女」は……身体の芯から噴き上がるような昂りを、その表情に滲ませていた。

「――来ます、来ますわ。まさか、このような日が来るだなんて……」
「来る……? それは、一体……?」

 互いに顔を見合わせ、困惑の表情を浮かべる「侍女」達。そんな彼女らを一瞥するルクレイテは、期待に満ちた笑みを浮かべ、薄い唇を震わせていた。

「我が星の救世主。そして――我が父の運命を変えし者」
「まさか……!」

 やがて、「巫女」の口から出た言葉に、「侍女」達が目の色を変える。不安から期待へと、感情を塗り替えるように。
 そんな僕達の様子に、満足げに頷きながら。ルクレイテは、満点の星空を見上げ――この星に迫る赤き流星を、仰ぐのだった。

「えぇ。あの蒼き星の戦士――ヒュウガ・タケル様ですわ」

 ――不時着寸前の、大破したコスモビートルを。

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