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月夜の下でキミと
スカイナイトドリーマー第5話

[8]前話 前書き
「月島さんてさ、休みの日も化粧しないの?」

同僚の吉谷がビール片手に少し赤い顔をしながら依子の顔を覗きこんだ。
吉谷とはほぼ同期だが私と違い、責任感もあり人望もある。爽やかで人当たりもいいので女子にもさぞモテるのだろう。

職場の送迎会にめずらしく依子が出席していた。いつもなら断るのだが、長年お世話になった上司が早期退職することになり、今回ばかりは顔を出さない訳にいかなかった。

「そうよ。別に着飾って会いたい人もいないしね」

依子の家のクローゼットには、冠婚葬祭用の衣服以外でスカートやワンピースといった女性らしいアイテムは皆無だった。

パーカーやトレーナー、ジーンズにチノパン。女性らしいアイテムと言ったら下着くらいだろうか?
依子が乙女な部分といったら、下着にだけは赤やピンク、ヒラヒラやリボンを惜しまず着るところだろうか?
そんな部分があるなんて、家族以外は誰もしらないのだけれど。

「ふーん、もったいない…」と吉谷が言い切る前に由美佳が梅酒ソーダ片手にふたりの間に体をねじ込んできた。

「吉谷先輩!月島先輩は今、好きな人がいるんですから、口説いたってムダですよ。」

「え!そうなの?」吉谷が目を丸くして見ている。
依子は、「ちょっと、そんなんじゃないよ。」ため息をついて、由美佳をにらむ。


あれから依子は、謎の少年を追いかけて何日も同じ辺りを飛び回っていた。
けれど、一度も姿を見ることはなかった。
人間味のない無機質な感じがした。最新型のアンドロイド?まさか。けれど、アップで映った少年の瞳の奥に宿るナニかが依子の心を捉えて離さなかった。



もう一度、会いたい。


吉谷と由美佳が、何かの話で盛り上がり大きな笑い声をたてていたが、依子の耳には入ってこなかった。

ハイボールの黄金色のシュワシュワを見つめながら、少年の姿を思い浮かべた。

[8]前話 前書き


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