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美食王
第二章
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「そう思っているのだ」
「左様ですか」
「馬鹿な話だな」
 今度は海老や烏賊をふんだんに入れた八宝菜を食べつつだ、ハールーンは苦笑いを浮かべてイマムに話した。
「何もわからないものを食べたいというのだからな」
「しかしですね」
「何とかして食べたい」 
 それをというのだ。
「私としてはな」
「そうですか」
「しかしこれは夢だ」
 あくまでというのだ。
「それに過ぎない、だからな」
「それで、ですか」
「このことは忘れてくれ」
「夢に過ぎないからですか」
「何時食べて何だったのかわからないのだ」
 それではというのだ。
「どうしようもないからな」
「いえ」
 ここでだ、イマムは考える顔になって主に答えた。
「若しかするとです」
「まさか」
「はい、あくまで若しかするとですが」 
 可能性は極めて低い、それでもというのだ。
「私は旦那様にそれをお出し出来るかも知れません」
「そうなのか」
「一週間後の朝です」
 その時にというのだ。
「それをお出ししましょう」
「私が食べたいものか」
「はい、それを」
「何度も言うが何時食べていてどういったものかわからないのだ」
 このことをだ、ハールーンはイマムに断った。
「それでも君は察しているのか」
「おおよそですが、父が旦那様のご幼少の時にお仕えしていましたね」
「君と同じ料理人としてな」
「では父に聞いてです」
「それを出してくれるか」
「そうしてみましょう」
「それでは」
「お待ちしていて下さい」
 一週間後にというのだ、そしてだった。
 イマムは自宅で父にハールーンの幼い時からのことを聞いた、主にその食事の好みをだ。そしてだった。
 当時の食材や調味料の状況も聞いた、そこまで聞いて彼は確かな顔になって自分がそのまま歳を経た顔の父ケシムに言った。
「これでわかった」
「旦那様が召し上がりたいものがか」
「うん、わかったよ」 
 こう言うのだった。
「完全に」
「そうなのか」
「これでね」
「よし、じゃあな」
「旦那様に召し上がってもらうよ」
 まさにそれをというのだ。
「一週間後にね」
「ああ、しかしな」
「しかし?」
「御前もやるものだな」
 ケシムはイマムのその顔を見て言った。
「そうしたことがわかるなんてな」
「いや、味覚は経験だね」
「知ってな」
「そしてわかっていくものだよね」
「その通りだ、それがわかっているからか」
「旦那様に召し上がってもらうんだ」
「そうするんだな」
 こう我が子に言うのだった。
「そして経験はか」
「最初が大事だね」
「何といってもね、それじゃあね」
「ああ、一週間後だな」
「旦那様に最高の味を楽しんで頂くよ」
 イマムは確かな笑顔で応
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