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激怒
第一章
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               激怒
 北加賀理央は温厚で礼儀正しい性格である、このことは誰に対してもであり彼女が怒ったところを見た者は誰もいないと思われていた、だが。
 理央本人はそう言われるといつもこう答えた。
「私も怒るわよ」
「えっ、そうなの?」
「理央ちゃん怒らないじゃない」
「いつも温厚でね」
「しかも礼儀正しくて」
「我を忘れないけれど」
「いえ、怒るし」
 それにというのだ。
「それに怒ったらその時は」
「その時は?」
「その時はっていうと?」
「もう自分で後で呆れる位凄くて」
 その怒り方がというのだ。
「とんでもなくて」
「凄くてとんでもないって」
「そんなに怒るの」
「そうなの」
「だから」
 それでというのだ。
「そんな人じゃないから」
「絶対に怒らないとか」
「そうした人じゃないっていうの」
「そうなのね」
「ええ、けれど怒らない様にはね」
 自分自身でとだ、理央は友人達にこの話題の時はいつも答えていた。
「努力しているから」
「自分でわかっているから」
「それでなのね」
「怒らない様にしている」
「そうなのね」
「ええ、これも修行と思っているし」
 実に剣道そして合気道をしている武道家らしい言葉だった。
「だからね」
「そうしてるのね」
「怒らない様にしている」
「我慢しているのね」
「そうなの」
 こう答える理央だった、そしてだった。
 理央は温厚かつ礼儀正しく過ごしていた、誰もそんな彼女を見てそうしてまさか怒るとはと思っていた、そんな中でだ。
 ある日だ、大学の剣道部の部活の師範が部員達に話した。
「今度の中学生がうちの大学に来るそうだ」
「中学生が?」
「うちの大学にですか」
「そうだ、うちの大学に稽古をつけて欲しいらしい」
 それでというのだ。
「それで来るらしい」
「中学生なのにですか」
「えらい熱心な学校ですね」
「大学生に稽古をつけてもらうとか」
「凄いですね」
「そうだな、じゃあ存分にな」
 師範は部員達に笑って話した。
「稽古をつけてやってくれよ」
「わかりました」
「そうさせてもらいます」
「その時は」
「ああ、武道家としてな」
 その心を忘れるなとだ、師範は言った。そしてだった。
 その中学校の剣道部の生徒達が大学の道場に来た、勿論中学校の顧問の教師も一緒に来ていたのだが。
 その教師、大柄で丸々と太りヤクザの様なパーマをかけた細い目の三十過ぎの男を見てそれでだった。
 理央は血相を変えてだ、こう呟いた。
「あいつは・・・・・・!」
「どうしたんだ、一体」
「はい、あいつはです」
 理央は蒼白になった顔で男子の主将に答えた。
「私が中学の時に練習試合で会った他校の教師ですが」

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