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Darkness spirits Online
第2話 仮想世界の戦火
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終える前に何かに気づいたらしい。

「……あぁ、そうかい。ウチにあるもんから、気に入ったヤツを選びな」
「……恩に着る」
「え……えっ?」

 それ以上は何も言わず、踵を返してしまった。そんな彼の後ろに続き、キッドも言葉少なに歩き出す。
 一方、ベサニーだけは2人の意図が読めず、首を左右に振っていた。

「ベサニー、お前そろそろ学校だろうが。さっさとシャワー浴びてこい」
「えっ――あっやだ! もうこんな時間っ!? 急が……ぎゃん!」

 そんな娘に、店長は背を向けたままぶっきらぼうに言い放つ。すでに時刻は7時過ぎ。身支度の時間を考えると、かなり急がねば遅刻は免れない。
 ベサニーはようやくそれを悟ると、慌てて駆け出し――工具箱に躓いて転んでしまった。キッドに向けて臀部を突き出し、地べたに顔面から墜落した娘を一瞥すると、父は深くため息をつく。

「……全く、忙しない娘だわい。欲しがる男の気が知れんのう」
「……それは、どうも」

 一方。キッドはベサニーに聞こえぬよう、想い人の父に呟いていた。

 ◇

「ねぇ、見てあれ」
「やだぁ……ホプキンスの奴よ」

 午後の休み時間。ハイスクールの授業も終わりに近づき、生徒達が放課後の予定に意識を向ける頃。
 ベサニーは独り、グラウンドにばら撒かれた鞄や教材を拾い続けていた。上の階からその光景を眺めていた女子生徒達が、嘲るように笑っている。

「……参ったなぁ。授業始まっちゃう……」

 彼女達の嗤い声を聞き流し。ため息をつきながら、散らばった私物をかき集めていく。その表情は疲れだけでなく、諦めにも似た色を滲ませていた。
 ――そう。彼女は以前から、虐めを受けているのだ。

「なぁにそんなとこで油売ってんのよ、赤毛。次の授業、遅れても知らないよ!」
「行こ行こ、油臭いのが移っちゃう」
「それもそうね! ――アハハッ!」

 ベサニーが席を外した隙に、彼女の私物を窓から放り捨てた女子生徒達。彼女達のリーダー格である金髪の生徒は、ベサニーの髪色をなじりながら、踵を返す。
 さらに取り巻きの生徒達も、ベサニーを笑い者にしながら立ち去っていった。すでに、次の授業の予鈴が鳴っている。……どうやら、間に合いそうにはない。

「……母さん……」

 自分の髪を撫でながら、ベサニーは消え入りそうな声で呟く。
 ――虐めを辛いと思わない日はなかった。自分の髪が恨めしいと感じたのは、一度や二度ではない。だが、幼い頃に死に別れた母から貰った、この髪を他の色に塗り潰すことは出来なかった。

 髪の色は変えられない。なら、諦めるしかない。
 昔は、いつか王子様のような人が助けてくれると夢見ていたが、高校3年生になった今となっては儚い思い出に過ぎないのだ。
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