暁 〜小説投稿サイト〜
うぬぼれ竜士 ~地球防衛軍英雄譚~
第12話 オンナとオンナの前哨戦
[1/3]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話
 ――翌日。

「よく逃げずに来たわね。そこだけは評価してあげる」
「……」

 ペイルウイングの装備に身を包む2人の美少女。彼女達は今、とある通りの路地の前にいる。
 彼女達の近くに控える関係者達は皆、真剣な面持ちでその動向を見守っていた。

「ペイルウイングの強さは、機動性にある。地形や障害物を問わず、あらゆる状況下で誰よりも早く現場に到着できる能力は、この兵科の戦闘力に直結する」
「――?」
「ペイルウイングなら、わかっていて当然よね? その能力を競って――優劣をつけましょう。私とあなた。どちらが義兄さんの側に相応しいか」

 かりんは不敵な笑みを浮かべ、ビッグベンの頂点を指差す。

「目標地点は、あの時計台の上端。あそこにたどり着くまでの経路は、各人の自由。いかに速くあそこに到着できるか――それで決着を付けるわ」
「……空の公道レース……ということね。いいわ、受けて立つ。リュウジを、あなたに渡すわけには行かないわ」
「フン……まるで私達が奪いに来た、とでも言いたげな物言いね。――私達は、返してもらいに来たのよ。かけがえのない家族をね」

 空中でのレースなら、住民に危害が及ぶことはない。僅かな逡巡を経て、フィリダは決闘を受諾した。
 恐れることなく、毅然と向き合ってくる彼女の姿勢に、かりんは鼻を鳴らして背を向ける。そして、首にかけたロケットペンダントを開き――生前の姉を写した写真を見遣った。

「見ててね……姉さん。私は必ず、義兄さんを取り返して見せる」

 その黒い瞳に、確かな決意を宿して。

「おいおい、こんな民間人もいる街中でレースしようってのか? あの乳牛女。EDF隊員として、どうなんだよ全く」
「公的には、EDFのプロパガンダを兼ねたパフォーマンスということにしてある。それに、2人とも他国の支部にまで名が知れている実力者だ。心配はいらない」
「――お上の道楽には困ったもんだ。ダシにされてるアスカも災難だぜ」
「あはは……」

 一方、外野では。決闘の行方を見守る3人の男達が、ヒソヒソと言葉を交わしていた。ダシ扱いを受けたリュウジは苦笑いを浮かべ――ふと、かりんと目が合う。

(怪我だけはしないように、気をつけてくださいね。かのんさんも、きっと心配していますよ)
(……あぁ、見てる……! 義兄さんが私を見てる……! 厭らしい目で私のカラダを……! ダメ、ダメよ義兄さん、姉さんが見てる前で! で、でも、義兄さんが望むなら……私は……)

 ――アイコンタクトは、まるで噛み合っていなかったが。

「あはは……まぁ、今はどちらも怪我なく終わることを祈りましょう」
「フィリダの応援はいいのかい?」
「私の応援なんていらないほど、彼女は強いですからね。それに、かりんさんの機嫌
[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ