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SAO─戦士達の物語
MR編
百四十九話 別れの時が来るまでは
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存分に食い飲みに興じる一同を、飲み物を飲みながらのんびりと眺めるケットシーの少女の姿があった。水色の耳を時折ピコピコと揺らして、木陰の切り株に腰を下ろしどこか遠くを見るように視線を向けるその少女に、黒ずくめの少年が脇から声を掛けた。

「みんなと一緒に食べないのか?」
「……ちょっと休憩よ。アンタは?」
「オレもそうしようと思ったんだけど、シノンが寂しそうにしてたからな」
「…………」
さらっというキリトに呆れたように微妙な表情を向けたシノンを見て、彼はなんともバツが悪そうに頬を掻いて白状する。

「ごめんちょっと話し相手が欲しかっただけです」
「最初からそう言いなさいよ、変な言い方するから調子外すんでしょ」
「はい……」
反省したように肩を落とすキリトに微笑んで食事を続けるシノンの脇で、大木に背を預けて串焼きを食べ始めたキリトの方を見ずに、シノンはふと呟くように言った。

「……一応、お礼言っておくわ」
「ん?いや、別に、俺はほんとに話し相手が欲しかっただけだし」
礼を言われるような事は何も、と言って手を否定するように振る彼に、シノンは肩をすくめる。

「それだけじゃないわよ……此処に連れてきてくれた事も、アスナ達を紹介してくれたことも……兎に角、最近の事、色々、全部」
「いや、それこそ別に俺は何も……」
続けて否定しようとしたがしかし、キリトはシノンの横顔を見ると、その言葉をひっこめた。こんなにも嬉しそうな顔をしている彼女に、これ以上無粋な言葉を差し込むのは憚られたからだ。

「……正直、こんな風に友達とバーベキューを囲んでおしゃべりするなんて、ほんの少し前には考えもしなかったのよ。だから、今が夢の中みたいな感じがする」
「……奇跡じゃないさ、此処は仮想だけど、この体験は間違いなく現実だ。前にそう言ったのはシノンだぜ?」
「くす……そうね」
あの日カフェで言ったことを思い出しながら、シノンは飲み物に手を付ける。
……もし、ほんの二カ月前に彼らと出会っていなかったら、きっと今日この日の自分は、ALO(ここ)で飲み物を飲むなどではなく、今頃は一人家で昼食を取るか、あるいはGGOの荒野を一人彷徨って居たはずだ。
この世のどこかに、こんな綺麗で楽しい光景が広がっているなどとは知りもしないまま、いや、仮に知ったとしても、それに自分が関わる事が出来たかもしれない世界だとはついぞ考えもせず。これからも自分は一人きりで生きて行くのだと信じ続けたままで。

シノンにとって、こういったイベントは正直過去の物だった。楽しいも、嬉しいも、全ては過去の物で、自分の未来にそんなものがあるとは思えなかった……というよりも、考える余裕が無かったのだろう。今を生きるほうに必死過ぎたから。

「でもそれなら、入っていかないのか?」
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