第四章
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「スタンスもはっきりしているしね」
「あからさまに反文明、反科学、反企業の」
「うん。科学的な雑誌ではないから」
医師は科学を第一としている。近代医療とはそうしたものだ。
だがその雑誌が違う。だから言うのだ。
「そもそも問題なんだよ」
「じゃあこの雑誌の問題点をですね」
「患者さん、いや」
「いや?」
「もっと広範囲に書こう。ネットやマスコミにも言おう」
矢作はここでは徹底的に動くことにした。雑誌の影響力を考慮ししかもだ。
その影響を受けている患者が自分達だけでなく全国規模であることを想定してだ。それでだったのだ。
彼は論文を書きネットやマスコミでのあの雑誌の問題点を発表することにした。そして実際に動いた。
稲葉も同じくそうした。二人は大きく動くと共に患者達にその雑誌の出鱈目さと正しい歯の磨き方を教えた。昔のそうした磨き方は問題があるとだ。
騒ぎは大きくなった。その雑誌の記事はおろか体質までもが世に多く語られる様になった。
それで歯磨きの騒動は大きな議論になった。その結果。
『また週刊金正恩か』
『オンカツの雑誌がやったか』
『だからオンカツは嘘吐きなんだよ』
『あんな雑誌の言うことを信用するとか馬鹿だろ』
ネットでは口々にこう書かれた。そして。
大手マスコミでもだ。こう書かれた。
『出鱈目な歯磨きを吹聴して実害を出した週刊金日成の捏造報道』
『他にもある、週刊金日成の悪質な記事』
『発行者恩田喝一の過去』
『これが市民の雑誌の正体だ』
矢作と稲葉の告発から大きく動いた。この杜撰な歯磨きは忽ち間違いだとわかり元からのオーソドックスな歯磨きに戻った。市販の歯ブラシで歯磨き粉を使う。
こうして二人のところに来る患者も減った。それでだった。
矢作はほっとした顔になって稲葉にだ。こう言ったのだった。
「いや、本当によかったよ」
「上手くいきましたね」
「全く。あんな出鱈目がまかり通るとね」
「患者さんがもっと増えていましたね」
「うん、増えていたよ」
まさにそうなったとだ。矢作も答える。
「大変なことになっていたよ」
「それを止められましたね」
「昔のやり方がいいとは限らないんだ」
達観した目でだ。矢作は稲葉に話す。二人はこの日も大学病院の喫茶店でコーヒーを飲みながら話をしている。それでこう言うのだった。
「ちゃんとね。科学っていうのがあるんだ」
「科学は常に動いていますしね」
「そう。新しく色々なことがわかっていくんだ」
「それなのに昔にこだわるのは」
「しかも偏った思想に基いてね」
「いいことではないですね」
「悪いことだよ」
曇った顔でだ。矢作は
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