第一章
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辛い愛
池上春奈と明菜は仲のいい姉妹だ。歳は春奈の方が一つ上だがいつも一緒にいる。二人は喧嘩一つすることなくいつも仲良く過ごしている。
その二人を見てだ。彼女達のお父さんとお母さんも笑顔で言うのだった。
「春奈と明菜は本当に仲がいいな」
「まるで双子の姉妹みたいね」
「顔がそっくりなだけじゃなくてな」
「何もかもがそっくりだし」
そしてだった。この姉妹は。
「お互いに助け合っていて庇い合ってな」
「こんなに仲のいい姉妹って他にないわよ」
「だって明菜は私の妹だから」
「お姉ちゃんはお姉ちゃんだから」
深い根拠も理由もいらなかった。この二人には。
それでこうお父さんとお母さんにもだ。笑顔で言えたのである。
「凄く大事だよ」
「大切でない筈がないじゃない」
「だから私明菜をずっと好きでいるよ」
「私もお姉ちゃん嫌いにならないよ」
「そうか。それならな」
「何があってもそうしなさいね」
お父さんとお母さんは二人の言葉を笑顔で聞いた。そうしてだ。
あらためてだ。二人にこう言ったのである。
「仲がいいということはそれだけで素晴しいことだからな」
「ずっとそのままでいなさいね」
これが娘達への言葉だった。両親のその言葉を聞くまでもなくだ。二人は仲がいいまま日々を過ごした。幸せそのものの日々だった。
だが幸せは何時までも続くとは限らない。ある日のことだ。
二人は両親と共に家の中で夕食を食べていた。お母さんの作った晩御飯をだ。メニューはコロッケにキャベツの酢漬け、それと茸の味噌汁だ。
それを御飯と共に食べながらだ。明菜がこんなことを言った。
「お母さん、このコロッケって」
「美味しいでしょ。お母さんが揚げたのよ」
「最初から作ったの?」
「ええ、そうよ」
大学に入ったばかりの二番目の娘にだ。母は答えた。
「だから普通のコロッケとは違うでしょ」
「うん、何かね」
「お店で買うコロッケも美味しいけれどね」
「こうしてお家で作るコロッケも美味しいのね」
「そうよ。だから今度ね」
明菜だけでなく春奈も見て言う。自分の娘達を。
「二人にこのコロッケの作り方教えてあげるね」
「うん、それじゃあね」
「お願いね」
明菜だけでなく春奈も笑顔で応える。そうしてだった。
家族で明るくそのコロッケを食べていた。二人はこの時も幸せだった。
だが急にだ。家が揺れた。その揺れは。
尋常なものではなかった。左右ではなく上下に激しく揺れた。それを感じてだ。
お父さんがだ。咄嗟に家族に言った。
「地震だ!テーブルの下に入れ!」
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