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とある3年4組の卑怯者
28 転校生
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 清水市の江尻小学校の3年3組の教室。そこに女子児童が一人で寂しそうに自分の席で椅子に座り、肘を机に付いていた。彼女の名は吉川みどりという。
 みどりは学校ではいつも孤独だった。なぜなら友達がいないからだ。なぜ友達ができないのか彼女自身にはわからなかった。遠足の班決めでは彼女に声をかけてくれる人はおらず、結局最後に一人足りない班に入れてもらうことが当たり前だった。理科の実験・観察の班や社会科実習の班では何かと積極的なことができない。失敗やうまく行かないことがあるとすぐに泣いてしまうため、皆を困らせることがお決まりだった。休み時間でも彼女を遊びに誘うものはいない。
 
 家に帰っても友達がいないので特に遊びに行く事もなかった。たまに自分の祖父の知り合いの孫である「まる子」ことさくらももこの家に行く程度である。みどりにとってまる子は自分と同い年なので彼女が唯一の友達であった。まる子には学校で友達がいてみどりにとっては羨ましかった。いつも一緒に遊ぶことが多いという親友、穂波たまえ、そしてみどりが好意をよせる藤木茂など。以前、まる子の誕生日で誕生会に誘われた時、まる子の学校の友達に会ったが、いろいろ個性のある人だった。ある日、学校のスケート教室でまる子の通う小学校と一緒に滑った事がある。まる子の通う学校にはいろいろ魅力的な人がいてまる子が羨ましかった。その中にはスケートを得意にしている一人の男子がいた。みどりは自分が転んでしまいそうだった所をその男子に助けてもらった。その男子が藤木であった。あの日からその藤木という男子が好きになっていた。そしてまる子に協力してもらい、藤木にバレンタインデーにチョコレートとマフラーをあげることに成功した。
 
(はあ〜、まる子さんの通う学校に転校したい・・・。そうすればいつでもまる子さんや藤木さんに会えるのに・・・)
 みどりは心の中でそう考えることもあった。確かにまる子や藤木が通う学校はみどりにとって十人十色な児童が沢山いて楽しく感じるのかもしれない。しかし、そんな都合よく転校できるわけがなかった。
 
 ある日、いつものようにみどりは家を出て学校へ向かった。
(まる子さんの家に遊びに行こうかな・・・。もしかしたら藤木さんにも会えるかもしれないし・・・)
 みどりはまる子に会うとともに藤木にも会えるのではないかと期待していた。まる子とは時々彼女の家に遊びに行ってはいたものの、藤木とは共にデパートへ行って以降、面会はない。

 みどりは学校に着いた。みどりの席は教室の一番後ろにあった。隣は予備として置いてある机と椅子で空席だった。
(この隣にまる子さんか藤木さんがいればいいのに・・・)
 みどりはそんなことを考える時もあった。始業の鐘がなる。そして、みどりのクラスの担任の男性教師、賢島(かしこじま)先生が教
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