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ゆきおがあたいにチューしてくれない
ついにその時が来るのか
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 ゆきおのおでこにチューという暴挙をしでかした翌日の昼。私は今日も、摩耶姉ちゃんと共に食堂でお昼ごはんを食べている。

「なぁ摩耶姉ちゃん。ずずっ……」
「あン? ずずっ……」

 今日はまたお日様がぽかぽかと心地よい、とてもいい天気。こんな日にふさわしく、今日のお昼ごはんの献立はざるそばだ。つるっとのどごしが心地よくて、そばつゆのお出汁の香りがとてもよい。そばの香りも立っていて、とても美味しいおそばだぜてやんでい。

「昨日さー……ずずっ……」
「ンだよ……もったいぶらずに早く言えよ……ずずっ……」

 べつにもったいぶっているわけではないのだが……やっぱり言うとなると妙に気恥ずかしいな……。

「ゆきおのさ。ずずっ……」
「おう。ずずっ……」
「……おでこにチューした」
「ぶふッ!?」

 私が昨日のチューのことを摩耶姉ちゃんに報告するやいなや、摩耶姉ちゃんの口からそばつゆとネギが吹き出していた。

「ゲフッ!? ゲフゲフッ!?」
「大丈夫か?」
「大丈夫もクソも……お前が変なこと言うからだろうがクソがッ!! ゲフッ……」
「だってホントにしたんだもん」
「ンなこといちいち報告しなくていいんだよッ!! ノロケか! あたしにノロケたいのかッ!!」

 げふんげふんと咳き込んでいるせいなのか……はたまた他に何か理由があるのか……摩耶姉ちゃんの顔は真っ赤っかだ。ほっぺたにネギがついてるのがなんだかカワイイ。

 ひとしきりむせた後、摩耶姉ちゃんは熱いお茶をずずずっとすすり、ふうっと一息ついていた。そして私のことをキッと睨み、湯呑をタンッと勢い良くテーブルにおいている。お茶がこぼれるこぼれる……。

「……で?」
「で?」
「いちいちその報告してきたってことは、何か相談事でもあるんじゃねーか?」
「……ぁあ、言われてみれば」
「ああじゃねーだろうが……まさか本当にただのノロケだったのか……?」

 正直なところ、報告みたいなものだったから別に相談したいというわけではなかったのだが……まぁ、悩みといえば悩みがひとつ……

 なんて私が考えていたら……

「こんにちは! ご一緒してよろしいですか?」

 この鎮守府の中で一番強いくせして、ザ・大和撫子の榛名姉ちゃんが、ざるそばが乗ったお盆を手に持って、私たちのテーブルにやってきた。相席を快く承諾し、榛名姉ちゃんは花が咲いたような満面の笑顔で摩耶姉ちゃんの隣の席に座る。

「では、いただきます」

 そういい、上品にそばを味わう榛名姉ちゃんの姿は、まさに女子力の塊にして、ザ・大和撫子。今しがた、武蔵さんを完膚なきまで叩きのめしてきたとは思えない女の子っぷりだ。

「ちゅるっ……うん、美味しいですね」
「「榛名」姉ちゃん……」
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