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SAO−銀ノ月−
遺愛
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「お兄〜!」

 玄関が開く音とともに、中学生ほどの少女の活発そうな声が家中に響き渡っていく。ここまで走って来たのか息はすっかり乱れていたが、構わず少女は適当に靴を脱ぎ散らかして家の中に上がり込むと、迷わずに廊下に面した『お兄ちゃんの部屋』と表札が提げられた部屋の扉を開ける。すると中で座っていた青年は迷惑そうな表情を隠さずにしながらも、机の上に用意していたような麦茶をコップに注いでいく。

「愛。お前さぁ……ただいまぐらい言えとか、勝手に部屋を開けるなとか、言いたいことは色々あるけど、そんなんじゃ嫁の貰い手がないぞ? ……ほら、麦茶」

「ふーんだ。お兄に貰ってもらうつもりだから問題ないもんだ……ぷはーっ! 生き返るー!」

「ったく……それよりほら、お前の興味はこっちだろ」

 愛と呼ばれた少女が麦茶を景気よく一気飲みする姿を、やれやれ、といった様子で『兄』は見つめていて。それでも愛が何を求めているのかは分かっているのか、麦茶の入ったボトルをどかして床に置くと、机の上には満載されたハガキとパソコンが平積みにされていた。

「え? お兄秘蔵のエロ画像フォルダ?」

「ちっげーよ! 《SAO》だよ、《SAO》!」

「そっちも気になるのに……」

 ブツブツと文句を言いながらも、愛は麦茶を飲んでいたコップをそこら辺に無造作に置くと、平積みにされているハガキを一枚取る。それは近日発売予定の《SAO》が手に入る、という懸賞用のハガキだったものの、その結果は倍率からして当然の不当選。とはいえ二人も一発で当たるなどと思ってはおらず、その平積みされたハガキは全て懸賞のものだ。さらに結果発表は発送に代えさせていただくという懸賞や、パソコンで応募したものもあったため、このハガキも氷山の一角にすぎない。

「……あとそれ、お兄っての外ではやめろよな!」

「はいはーい。よーし、《SAO》当てよー、おー!」

「おー!」

 もう当選か落選かは決まっているのだが、そんなことには触れないでいて。ひとまず気合いを込めて兄妹はハガキの山に向かっていくと、兄が用意していたダンボールに落選したハガキを放り投げていく。

「頼むぞー……これでダメなら叔父さんたちに顔向けできん……」

「ふん。ただお金をくれるだけじゃーん」

「そのお金がないと、《SAO》どころかウチらは生活すらできないだろ?」

「そーなんだけどさー……」

 大学生と中学生の兄妹がマンションで暮らしていられるのも、死んだ両親の遠い親戚とやらが欠かさず仕送りをしてくれるからであり、二人の学費は両親の遺産でなんとかなっているが、その仕送りがなければ二人は生きていられない。ただし金は出すが関わる気はないらしく、生活費を送ってくるだけで会ったことは数えるほ
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