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俺の四畳半が最近安らげない件
次元の果てのトランクルーム
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今さっき、俺の『キン肉マン全巻』『スノーボード』『炬燵一式』等が、俺の目の前から消え失せた。俺の荷物を全て呑み込んだ4畳半のトランクルームには今、他の客の荷物が、何事もなかったように現れた。
それもあと1時間くらいで消える。…分かっている筈なのに、何故胸騒ぎが止まらないのだ。


安心・安全・低価格の四次元トランクルームの広告を頼りに事務所を訪れたのは、先週の事だった。


「まず、四次元トランクルームの仕組みですが」
事務的な口調の案内係は、書類を軽く示しながら説明を始めた。
「同じスペースではありますが、他のお客様と『時間』をシェアして頂きます」
「時間を」
「知っての通り、四次元とは『縦・横・奥行』の三次元、プラス『時間』で構成されております」
「そう…らしいですね」
四次元空間を使いこなす技術が開発されてから10年近く経つ。人類はそれを恐る恐る、しかし着実に実用化していった。一番期待されたのは、倉庫の省スペース化。実際にAmazonやブックオフの倉庫のような、広大なスペースを必要とする企業は真っ先に飛び付き、その開発に惜しげもなく投資した。
その技術が民間使用レベルまで下りて来たのはつい最近。基本的にアウトドア派の我が家は、テントやスノボなど、季節限定のかさばる荷物が多い。しかしマンション住まいで置き場はなく、トランクルームは欠かせないものだ。
「例えばスノーボード。シーズンオフなら例えば、この世界には存在しなくても構わないわけですよね」
「お、おう…極端な話をすれば」
「そこで…お客様には昼の14時から15時まで、このスペースをお貸しします。このトランクルームでは、お客様の荷物は14時から15時まで『存在』します。それ以外の時間帯は、お客様とこのスペースをシェアしている他のお客様の荷物が、シェアしている時間…一時間程度ですが…存在するのです」
「成程、時間を切って存在すると」
「その通りです。預けた荷物を出したい時は、事務所にお電話頂ければ、当社の四次元空間エキスパートが14時から15時の間にその荷物を取り出して一時的に保管・受け渡しをいたします。有料でよろしければ配送サービスも」
「面倒だなぁ…自分で取りに行っちゃダメなの?」
「正直な話、まだ分かっていない事も多い空間ですからね…それにプライベートの事情もありますし」
「どういうこと」
「14時から15時以外の時間帯は、他のお客様の荷物が存在するんですよ」
「なるほどね」
「それにもし作業が滞ってトランクルームから出るのが遅れると、お客様の荷物ごと次の日の14時に飛ばされてしまいます」
お仕事持っている方には大問題でしょう…と呟いて、案内係の男は顔を上げた。
「ここまでの話で、何かご質問は?」
あとは普通の不動産契約と同じだ。手続きの話が終
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