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シベリアンハイキング
カラケレイト
老いた主

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振り向くと、老犬いや、狼なのだろう。そう思われる何かがそこに佇んでいた。ユスフはすかさず拳銃をかまえた。が、手が止まった。先程の群れの狼とは比べ物にならぬ位に痩せ細った、骨と皮の体。若干震えているように見える脚。全てが死期の近い、老いた犬のそれだった。ただ、ユスフの関心はそんなところにはない。この狼、首から先、頭というべき部分が無かったのである。首の付け根で体が終わっているのだ。生きているのが不思議である。ユスフは向けた銃を下した。表情は見えないが、威嚇していないことが何故か分かったからだ。顔の無い犬のようなものと意思が通じる。まことにもって奇妙な感覚だが、これは言われてみると、あの白く輝く男フブルとあった時以来、何かと気になっていた感覚ではあった。それは直感が、過度に鋭さを増した結果、到底五感では把握し得ないはずの情報まで汲み取ってしまう、そういう感じのものだった。顔の無い狼はユスフの乗った馬の横を無警戒に通り過ぎ、ユスフが目指す方角へ弱々しい足取りながら小走りを始めた。 まるで、老人が道案内を買って出てくれたかの様に。
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