暁 〜小説投稿サイト〜
シベリアンハイキング
カラケレイト
猛る四足

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数秒の後、霧の中に数個の影が動くのが見えた。動きは人より早く、四足の生き物のそれである。恐らく狼であろう。走ったところで追い付かれるのは目に見えている。すぐさま、脇から回転式の拳銃を抜き上空に一撃を放つ。しかし、妙なことに獣たちは逃げる気配が無い。確実に近くにいる。次の瞬間、不意に一迅の風が吹き、霧が晴れた。距離が二十メートルも無い岩のふもとに狼が五匹 。ユスフと目があった瞬間に狼達は猛然と突進してきた。瞬時に持っていた拳銃の引金を引く。一つ、二つとまず額を撃ち抜いた。次の二匹は喉元に弾が当たった。しかし、最後の一匹が三メートルまで迫っていて間に合わない。その一匹が勢いそのままユスフに跳びかかる。次の瞬間、鮮血が辺りに飛び散った。足元に頭を叩き割られ、顔面の潰れた、先程の狼が転がっている。噛まれるより早く、ユスフが背にしょっていた山刀を抜き、一撃を食らわせる方が速かった。辺りに静寂が戻った。危険は全て去った様に思われ、ふと安堵の溜息が出た。仕切り直しとして、山刀の血を拭い、拳銃に弾を込める。その時である、今まで何故気付かなかったのか、誠に不思議なことに、後ろから視線を感じるのであった。
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