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俺の涼風 ぼくと涼風
9. はじめての演習(2)
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っ赤にして『ふんッ!?』と声を上げている。ゆきおにとっては魚雷発射管はかなり重い装備らしく、中々持ち上げることが出来ないようだった。内股になっているのは、この際目をつむろう。

「涼風。それ、装填してるのか?」

 そんなゆきおの様子を心配そうに見つめる提督。当たり前だが、本物の魚雷は装填していない。でもゆきおには雰囲気だけでも伝えたい。そう思った私は、魚雷発射管には、演習用の模擬弾を装填していることを提督に伝えた。

「そっか。気を使ってくれてありがとな」
「いいってことよ!」

 私と提督のやり取りの間も、魚雷発射管を持ち上げようとするゆきおの奮闘は続いている。重いものでも、自分で持ち上げたがるゆきおだ。私はゆきおの意志を汲み、彼が私の魚雷発射管を持ち上げるのを待っていたわけだが……

「ゼハー……ゼハー……す、すずかぜ……」
「ん? どした?」
「ごめん……ゼハー……今回だけは……て、ゼハー……手伝って……」
「あいよっ!」

 流石に今回は持ちあげられなかったようで、私に助けを求めてきた。私の胸が少しだけ暖かくなり、私は台車の上の魚雷発射管の前で、ゼハーゼハーと息切れを起こしているゆきおの代わりに、魚雷発射管をひょいっと持ち上げてあげる。

「ほい。どうすんだ? 早速つけてみるか?」

 ゆきおは『ちょっと待ってね』といい、自分が羽織っていたカーディガンを脱ぐと、私の背後に回った。そのまま肩にカーディガンをふわりとかけてくれ、再び私の前に戻ってくる。

「はい」
「え……なんで?」
「だって僕が羽織ってて濡れちゃったら大変だよ」
「だったら提督にでも」
「んーん。涼風、寒そうだから。僕が艤装つけてる間は、涼風がそれ羽織ってて」

 肩に感じるカーディガンの温かさのせいか……少し顔が熱い。魚雷発射管を一度地面に起き、袖に腕を通すと、袖は思ったより長かったらしく、私の指がほんの少し外に出るだけだった。

「?」
「ほ、ほらっ。早く背中向けろよっ。あたいが魚雷発射管、背負わせるからさ」
「どうかした?」
「こ、こんちきしょう……」

 うう……そんなきょとんした顔で、まっすぐ私を見つめ返さないで……。

 私の妙な態度にいまいち納得がいかない表情で首をかしげたまま、ゆきおは私に背中を向けた。こうやってみると、確かに背は私より小さいといっても、そう変わらない。でも、肩と背中はとても細くて、なんだか私より華奢な気がしてならない。

「提督、いいか?」

 念の為、最後の確認だ。提督はうんと力強く頷いてくれた。それを受け、私はゆきおの左手を取って、ランドセルのように取り付けられた魚雷発射管のベルトに通し、ついで右手もベルトに通して、ゆきおに魚雷発射管を背負わせた。

「ぉおっ!
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