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トシサダ戦国浪漫奇譚
第一章 天下統一編
第二十四話 幼き名将
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た。

「私が降伏すると見込んでいたということですか?」
「いいえ。どんな状況にでも対処できるように根回しを行っていただけです」
「私が降伏しなければどうされたのですか?」
「美濃守殿、それを聞く必要はないでしょう。あなたは私に降伏されたのですから。私は最善を尽くしただけ。全てはあなたが選択したことだ」

 俺は真剣な表情で北条氏規を見据えた。俺の様子の変化を見て彼は悟ったようだ。もし、北条氏規が降伏しなければ、俺は韮山に在陣する豊臣軍を巻き込み総攻めを行い城内を蹂躙していた。苛烈な決断に迷いがないと言えば嘘になる。だが、降伏しない者の末路を敵に示すことは無用な犠牲を減らすことに繋がる。感傷で敵を殺すことを躊躇い。更に多くの敵の命を奪う位なら、畜生と言われようと俺の手を血で染め抜く必要がある。

「『男子三日会わざれば刮目して見よ』と言いますが、よい表情をされるようになりましたな」

 北条氏規は俺を凝視しながら感慨深そうに呟いた。

「誉めても何もでませんよ」

 俺が笑顔で北条氏規に言った。北条氏規も笑顔を返した。

「世辞を申したつもりはありません」
「美濃守殿、約束は守らせていただきます。美濃守殿のお力をお借りすることもあると思います。その時はよろしくお願いいたします」

 俺は床几より立つと北条氏規の前に座り、彼の手を取った。

「微力ではございますが、お役立てください」

 北条氏規は強く頷いた。俺と北条氏規で北条家の家名を守ることを誓った。歴史でも北条家は一旦滅びるが後に小大名ながら復活する。何もしなくても北条家は残る。でも、北条氏規はそれを知らない。
 だが、一度約束したことだ。歴史より良い形で北条家を残せるように頑張るつもりだ。





 北条氏規の降伏を受け入れ、俺は柳生宗章を伴い大手門に移動した。大手門には小出の家紋入りの旗がたなびいていた。大手門の外に出ると韮山城の異常に気づいた豊臣軍の武将達が軍を引き連れ集まっていた。
 俺の許しなく勝手に城攻めには参加できないから、取りあえず集まったということだろう。でも、彼らの出番はない。
 俺が豊臣軍を見回していると、軍勢の中から見知った人物が表れこちらに近づいてきた。福島正則と蜂須賀家政だ。二人とも愉快そうな様子だった。

「相模守、やったようだな!」

 福島正則は俺の背中を右手で叩いてきた。その威力に俺は思わず咳き込んでしまった。もう少し手加減してくれ。

「悪い。悪い。それで守備はどうなのだ?」
「北条氏規は降伏しました」

 俺の言葉に福島正則と蜂須賀家政の表情が固まった。

「昨夜の内に大手門を突破し江川砦を落としました。その後、朝駆けで天ヶ岳砦を落とし、北条氏規はこれ以上の抗戦は無理と考え私
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