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シベリアンハイキング
カラケレイト
イェカサ市街、見聞

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イェカサについた後、宿屋で一泊し、ユスフは翌日、後の行程のための装備を整えるために市場に買い物に出掛けた。この町はこの辺りの主要な道路が交差する場所にあり、古くから交易で成り立っていた。大通りの至るところに設けられた市場、それが店を構えるものであれ、簡易なテントのものであれ、多岐に渡る品揃え、集う人々の身なり、交わされる言葉の多様さがその町の在り方を端的に示している様に思えた。朝八時、一先ず通りに出たユスフは空腹感を覚え、どこかで朝食を取るべく歩みだした。通りを進むと市場に入る。その入り口付近は家畜の売買所になっており、白い毛並みが特徴的な子やぎが競りにかけられているところであった。また、先に行くと金属で出来た家財道具、主に鍋や水差しといった物が、太陽の光を浴びて黄金を存分に振り撒きながらところ狭しと並ぶ。この地方では、まだそういった物については工場の大量生産によって出来たものがあまり広まっていないようで、家財職人の生活はまだ保証されているようであった。さらに衣類の商店が立ち並ぶ。赤、緑、青に染められた絹織物、それらに緻密に織り込まれた 花、星、動物の刺繍の出来を前にすると、一流の画家が書いた風景画を見る様な気持ちになるのであった。さらに奥に進み脇にそれると、主に立ち食いの屋台が並ぶ。ここでユスフは一杯の蕎麦を頼んだ。それはその土地の小麦を練って麺状にし、数日を経て後熟成させたもので、この地方では極めてポピュラーなものである。浸けるスープは主にヤギや牛の骨から出汁をとり、それに玉葱他大量のスパイスを加え長時間煮込んだもの。茹でた麺をスープと合わせ、最後に炒めた野菜と肉を載せて完成である。決して高級なものでは無い。しかし災難な旅人の体を慰めるには十分であった。食事を終え、もと来た道を行く。来るときに物色していたので、必要なものを手早く買っていく。これからの行程は今まで以上の困難が予想される。携行食料、固形燃料、弾薬、等々ユスフは買い込んだものをまとめ、馬にくくりつける。夜になっても町は相変わらず賑やかである。まだここにいたいとと思いつつ、明日に備え床に就くのであった。

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