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シベリアンハイキング
カラケレイト
イェカサでの回想

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イェカサの町についたのは次の日の午後三時を過ぎた頃であった。一睡もしていない。しかし、不思議とユスフの目は冴えていた。昨晩のことを思い出す。フブルというあの男と対面していた時のこと。最初警戒心から銃を構えていた、いきなり一方的に語りかけられ、頭が混乱したが暫くして気づくに、体が動かなくなっている。全身が硬直しているのだ。構えたまま、ユスフは一晩彼と向き合った。およそ死んだ後、魂が予定通り肉体を去らなければ、こんな感覚だろう。ユスフは目と耳と頭だけに神経を集中せざるを得なかった。更に気づいたのはこのフブル、話しかけてくるのだが口が動いていない。声で話しているのではないのだ。ユスフの頭の中に大量のイメージ、思念の様なものが押し寄せて来て、それがどうやら彼からの語りの様に思われた。一方的に、実に一方的になされたそのコミュニケーション。もはやイメージの注入と言っても良いのだろうが、それは辺りがうっすら明るくなるころ終盤を迎え、東の空に星が見え始めると共にその語り部の姿はおぼろ気になり、遠くの方で一番鳥が無くとユスフの体はようやく解放され、同時にその場で意識を失い倒れるしかなかった。うつ伏せの旅行者の前にはまた、いつもの静かな湖畔が広がるだけであった。
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