暁 〜小説投稿サイト〜
シベリアンハイキング
カラケレイト
とある教師について

[2]次話
豊かに実った麦畑。どこまでも晴れ渡る空。その間を通る畦道を一人の男が歩いている。年の頃は三十代後半といったところ。身なりは白いワイシャツにカーキ色のチノパンで、痩せ型である。辺り一帯畑であるこの地域で、彼は一目で頭脳労働者とわかるのであった。名をテベル・ユスフ。この地区の学校で教師として三年前に赴任して来た。生徒の数は五百人程度で、六歳から十七歳位までが通う。彼は数学が担当なのだか、慢性的に教師不足の田舎ではそれにとどまらず、理科、更には社会科科目も教えていたりする。彼自信生まれはこの広い国の西の方で、この場所からは大分遠かった。一般的にこの国では、人は生まれた土地を離れることは稀である。それは移動のインフラがまだ脆弱であること、また生活のための経済活動が極めて狭い範囲で完結している、事足りるということが原因なのだが、結果いわゆるよそ者は目立つことになる。その目立つ人々は大体二種類で行商人、旅芸人の一座といった胡散臭い連中と、県知事から警察までの中央政府から派遣されたうるさい“お上”という二つに大別されるのであった。後者に属するユスフは当初そういった感情からくる生徒、保護者からの拒絶を恐れたが、それは杞憂であった。赴任してから三年間特に問題なく日々授業をこなすだけであったが、それ相応に人気のある教師という立場を得ていた。
[2]次話


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