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俺の涼風 ぼくと涼風
3. もう一度
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 遠征任務が終わり入渠も済んだ後、私はわくわくする気持ちを押さえて廊下を歩く。行く先は新宿舎。あそこの三階には、新しい友達のゆきおがいる。昨日私が拾った紙飛行機を返さなきゃ。そんな口実で、私は一人、新宿舎へと急いだ。

「……へへ」

 自分でも意味が分からないが、これからゆきおと会うんだと思うと、自然と足が弾む。入渠したあと、桜の木のそばのベンチで涼んでいたが、昨日と同じように窓は開いていた。ゆきおは今日もいるようだ。窓のカーテンが気持ちよさそうに、風になびいてパタパタと舞っているのが見えた。

 食堂前を歩き、渡り廊下を抜けて、新宿舎に入る。新宿舎は外装も純白でキレイなものだったが、内装もとてもキレイでまったく汚れてなかった。新築の建物特有の匂いがほんのりと立ち込め、ここが真新しい建物であることを物語っている。

 エレベーターの前に立ち、上向き矢印のボタンを押して、エレベーターが下がってくるのをしばらく待ったが……

「……階段でいこっと」

 なんだかエレベーターの到着が待ちきれない私は、階段を使うことに決めた。エレベーターのすぐそばにある階段通路に入り、階段を一気に駆け上がる。二階に到着する寸前、『チン』という音が聞こえた。エレベーターが一階に到着したようだ。誰もいない場所でドアを開くエレベーターに、ほんの少し罪悪感を覚えたが、もっと早く到着しなかったエレベーター本人が悪い。そう割り切り、私はさらに急いで三階に駆け上がる。

 バンという足音と共に、三階に到着した。廊下に出ると、一階の廊下と同じ構造の廊下が待ち構えていた。

「えーっと……ゆきおの部屋は……」

 ぱっと見で四つほど並んでいるように見えるドアが、それぞれ『私がゆきおの部屋のドアだ』と言っているような気がした。この中から選ぶのも面倒だ。一件一件、ノックして確認することにしよう。どうせ、ゆきおしかこの宿舎にはいないはずだし。一番手前のドアの前まで来た私は、右手に持っていた紙飛行機を左手の方に持ち替え、空いた右手で勢いよくドアをノックした。

「おーい! ゆきおー!!」

 ついつい力を込めすぎてしまい、『コンコン』ではなく『ドカンドカン』という砲撃音にしか聞こえないノック音を響かせてしまう。そして、それに負けない大声でゆきおの名前を呼んだ。返事は……ない。ここではないようだ。すぐに、その左隣のドアに移動し、私は再び、艦娘らしい、砲撃音のようなノックを響かせた。

「ゆきおー! ゆーきーおー!!」

 さっきよりも、更に大声でゆきおの名を呼んだ。ほどなくして、昨日も聞いた、優しくて、それでいて私の耳によく届く、ゆきおの声がドアの向こうから聞こえてくる。

「え、えっと……どなた、ですか?」

 なんだか昨日も似たセリフを聞いたな
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