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Dragon Quest外伝 〜虹の彼方へ〜
Lv32 ラティと共に去りぬ
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「へ、そうかい?」
 俺は自分の衣服に鼻を近づけた。
 すると確かに、いい香りがしたのである。それは、ラベンダーのような香りであった。
 俺はここでピーンときた。
(これは多分、沐浴の泉の香りだ……)
 だがその直後……アーシャさんが、俺の知らない謎を解いたのであった。
「あ、思い出しましたわ、この香り。これはイシュマリアの女性が体に振り掛ける、清めの香水の香りですわ」
「え、本当ですか、アーシャさん」
「私も持っていますからわかります。この香水は、女性神官が沐浴する時に使われる物なのですが、その他にもこの国では、女性が親愛なる人物と会う時にも使われるのです。どういう事ですの、コータローさん……」
「どういう事ですか、コータローさん」
 そして2人は俺を睨み付けるかのように、鋭い視線を投げかけてきたのであった。
 明らかに疑惑の眼差しである。
(やっべぇ……服に付いたこの香り、多分、あの泉に漂っていた香りだ。ど、どうしよう。なんて言おう。つーかどうやって誤魔化そう。ラティ、何かいい方法は!)
 俺はそこで、腹の上にいるラティに向かい、目で訴えかけた。
 するとラティは、悲しそうな目で俺を見詰めていたのである。
 ラティは無言で口をゆっくりと動かした。
 その口の動きを読むと、ラティはこう言っていたのである。
《ごめん、自分でなんとかしてや》と。
 俺も口だけを動かして、ラティに伝えた。
《そこをなんとか》
《無理やわ》
 ラティのこの反応を見た俺は、言い訳を必死になって考えた。
 そして、なんとか捻りだした言い訳を2人に語ったのである。
「じ、実はですね、さっき外を散歩していた時に、女性の神官とぶつかってしまったんですよ。その時、水みたいな物が掛かったから、この香りは多分それなんじゃないかなぁ。なぁんて、あはは」
「それは本当ですの?」
 アーシャさんは尚も疑惑の眼差しを浮かべていた。
 俺はコクコクと首を縦に振る。
「ええ、本当です。本当ですとも。心の底から本当ですとも」
「そうですか。まぁそういう事なら仕方ありませんわ」
 どうやら信じてくれたようだ。ホッ。
 サナちゃんはそこで、俺に抱き着いた腕を更にギュッと抱きしめてきた。
「良かったです。どこかで女性と会っていたのかと思いました」
「ははは、幾らなんでも、それはないよ」
「さて、それではもう寝ますわよ、コータローさん。明日は早いのですから」
「はい、もう寝ましょう」
 とまぁそんなわけで、俺は最後の最後に冷や汗をかいてから、一日を終える事になったのである。
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