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SAO−銀ノ月−
掛罠
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『――せいいっぱい遊ぼうねぇ!』

 それが俺の耳に最もこびりついたリーベの言葉。鬼ごっこや達磨さんが転んだなどと、とにかく彼女は『遊ぶ』ということにこだわっていて、まさにゲーム感覚で死銃事件の一翼を担っていた。俺との戦いもその一貫でしかなく、人間の命がかかっていようが、本当に楽しそうに彼女は踊る。

『――羨ましいよね、生死を賭けた戦いなんて出来て 』

 その理由は、かつて《SAO》で戦死した彼女の兄が感じたことを理解すること。まるで意味は分からないが、それだけを求めてリーベは行動している。兄がデスゲームで行っていた命懸けの戦いとは、果たしてどんなものだったのか。その常人では計り知れないことを知るために、彼女はああして狂気に堕ちたのかもしれない。

 ……しかし、もう《SAO》の浮遊城は存在しないのだ。それでもかつての死銃のように、心だけは未だにあの脱出不能の牢獄に囚われたままらしく。助ける、などと人聞きのいい言葉を発する気こそないが、未だに《SAO》から逃れられない者を解放するのは、曲がりなりにもあのデスゲームを終わらせた俺たちの義務だ。

 ……そうしてリーベは、俺が止められなかった人物なのだから、なおさらだ。

「やっほー、ショウキくん! 女の子を待たせるなんて万死に値するけど、久々の再会だから許してあげる!」

 そうしてイグドラシル・シティ近くの浮き小島、多少の大きさがある岩にゆったりと腰かけたリーベが、飛翔してきた俺たちに向かって手を振ってきた。その小島は何もなく、そして適度に広い大地が広がっていて、まるで闘技場のような様相を呈していて。障害物もなく見晴らしもいいため、罠を仕掛けられるような場所もないが、念のために用心しながらも俺たち三人はその浮き島に降り立った。

 先程、リズベット武具店を訪れた時は一瞬だけしか見えなかったが、その外見は《GGO》の時とさほど変わらず、露出度の高い踊り子の衣装を身につけている。あちらではピンク色の髪を
ツインテールに結んでいたが、こちらでは無造作に肩まで伸ばしているだけだ。そうして観察しているうちに目が合うと、今までニコニコとしていたリーベの表情が、俺の背後を見ながら不機嫌なものに変わっていって。

「でも、せっかくのデートに他の女の子を連れてくるのは、もう減点ってところじゃないよ?」

「話は――」

「……リズ。ちょっと待って」

「あれ? シノンちゃん久々!」

 相変わらずのリーベの言動に我慢ならないように叫ぼうとしたリズだったが、後ろで油断なく周囲を警戒するシノンに止められる。元々は同じ《GGO》にいたよしみからか、シノンの存在には反応してリーベは岩に腰かけたまま拍手を送る。……問題は、アバターが違うはずの彼女をシノンだと見破ったことだが。

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