暁 〜小説投稿サイト〜
非日常なスクールライフ〜ようこそ魔術部へ〜
第61話『領域』
[1/5]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話
魔術バトル真っ最中で騒ぎに騒いでいる裏庭。しかし、未だに誰一人として近づく者・・・いや、気づく者さえいなかった。

そんな怪しい空間で、一人の少年が右手に光を宿したまま、ぶつぶつと呟いている。


「集中集中・・・はぁっ!」パシュン

「遅いっ!」ヒュ

「くっ…」


発射時間が遅いため、弾速が速いとはいえ当たらない。緋翼の反射神経が勝ってしまうのだ。やはり、まだ使いこなせているとは言い切れない。

伸太郎は嘆息しながら、正面で様子見とばかりに佇む緋翼を見据える。威勢の良い啖呵を切っておきながら、この有様だ。辛いものがある。


「さすがに無策で突進はマズいのだけども、こうして遠距離でやっても勝ち目はない。なんかこう…もうちょいクリエイティブに技を発想しないと・・・」

「…いやアンタ、技が全てじゃないからね?」


独り言が緋翼に届き、軽く呆れられる。だが、それ以外に方法が無いのが現実。素手で相手の懐に飛び込んだ所で、刀相手に敵う訳がないのだ。


「それにさアンタ──もう魔力尽きるでしょ?」

「っ…!?」

「なに驚いてんの? アンタが体育祭の時にぶっ倒れたの忘れてないからね?」

「あ…」


図星だった。体力は魔力と比例して、もう残り少ない。隠していたつもりだが、緋翼には見抜かれていたようだ。

さて、どうするか。特攻でもされたら勝ち目はない。


「…だったら、ぶっ倒れる前に悪あがきさせて貰うぜ!」


伸太郎は再び指に光を凝縮させる。残り全ての魔力で。集められた光は、先程と比べて一回りほど小さいが、一層眩しく輝いている。


「今さら無駄なことよ。溜め切る前に片付けてやるわ!」ダッ


緋翼が刀を構え、忍者の様な速さで迫ってくる。


──しかし、これは予想の範疇。


伸太郎は照準を真下に定めた。


「っ!?」

「道連れだ!」


光が伸太郎の指から放たれる。


──その瞬間、轟音と共に閃光と衝撃が訪れた。要は爆発が起きたのだ。緋翼はもちろん、伸太郎にすら爆風が直撃し、双方に吹き飛ぶ。



爆音の余韻が消えた頃だろうか。緋翼が口を開いた。


「一体…何が…?」

「元から、熱のある光を…俺の炎で、増幅させたんすよ。凝縮させたのも…衝撃を与えることで、一気に光が拡散し、爆発するのを…狙ったんす」

「……完全に、油断してたわ。やるじゃない」


緋翼に褒められたようだが、今は喜ぶ気力もない。言わずもがな魔力が切れて、立ち上がれそうにないのだ。緋翼もダメージを負い、戦闘不能。結果、二人して地面に突っ伏していた。


この勝負──引き分け。








[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ