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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第七十五話 繁栄と衰退、そして……
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は僅か四十分程の間に将官約六十名が戦死した。いわゆる軍務省にとって涙すべき四十分だ。戦死した将官は殆どが貴族だった。

「貴族達は大量に戦死した将官の補充が出来なかった。その補充を行ったのは主として平民だった……」
「……かつて軍で起きた事を政治の世界でも起こそうと言うのですね」
「……」

わしは答えなかった、答える必要も無かっただろう。妻も敢えて答えを求めようとはしなかった。ただ二人でソファーに座っていた。妻がわしの持っている本に手を伸ばしてきた。そして題名を指でなぞる……“銀河連邦の終焉と帝国の成立”。

「いつかこんな本が出版されますわ」
「ん?」
悪戯を思いついたような表情だ。はて、何を考えついた?

「銀河帝国の衰退と再生……、素敵な題名だと思いません?」
意表を突かれた。妻はこういう言い方でわしの考えに賛成してくれたのだろう、有り難かった。
「そうだな、出来れば生きている間にその本を読みたいものだ……」
「読めますわ、きっと」

妻が指を絡めてきた、華奢で滑らかな白い指だ。その指を握り返しながら思った。本当にそうであれば嬉しいと……。



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