暁 〜小説投稿サイト〜
亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第七十二話 目的と手段
[1/6]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話
宇宙暦 795年 8月 5日  ハイネセン   ジョアン・レベロ



シトレが笑っている、トリューニヒトも笑っている。賭け金はフェザーンとフェザーン回廊? 一体何を言っている。ホアンの顔を見た、彼も訳が分からないといった表情をしている。

「待ってくれ、本気で言っているのか? フェザーンを賭けの対象にする? 正気とは思えんな。大体独立とは何だ、政府に断りもなく勝手に出来る事ではないぞ。必ず反対が出る」

「レベロの言うとおりだ。フェザーンとはさまざまな形で政財界は繋がっている。フェザーンを利用しようと言うのは危険だろう。まして軍を派遣するなど……」
私とホアンの問い、いや詰問にも二人は動じた姿を見せなかった。相変わらず笑みを浮かべている。

「シトレ! トリューニヒト! 一つ間違えばフェザーンを帝国に押しやることになるぞ」
「落ち着けよ、レベロ」
シトレの顔から笑みは消えない、トリューニヒトの顔からもだ。その事が無性に腹立たしかった。一体二人とも何を考えている。

「落ち着けと言ってるんだ」
「……」
「サンドイッチでも食べたらどうだ、少しは落ち着くぞ」
何がサンドイッチだ、そんなもので落ち着くか、サンドイッチを二つ口に入れ、ワインを飲む。落ち着け、ジョアン・レベロ。

私の様子を見て二人が苦笑している、本当に腹の立つ奴らだ。
「落ち着いたぞ、どういう事だ、説明しろ」
二人の苦笑がさらに大きくなった、ホアンまで笑っている。

シトレとトリューニヒトが顔を見合わせた。微かに頷いている。トリューニヒトが話し始めた。

「誤解してほしくないんだが、我々はフェザーンを占領しようと考えているわけじゃない」
「しかし、フェザーン方面で戦争という事は軍を派遣するのだろう」
「軍は派遣する事になるかもしれんが、フェザーンからの依頼を受けてからになるだろうな」

小首を傾げながらトリューニヒトが答えた。つまり帝国軍に先に攻めさせるという事か。
「しかし、そう上手く行くか? 帝国だとてフェザーンを攻める事の危険性は分かっているだろう」
ホアンも小首を傾げて言う、私も同感だ。フェザーンを同盟に押しやることになる。帝国にそれが分からないとは思えない。

「レベロ、ホアン、フェザーンが今一番恐れている事は何だと思う?」
一番恐れている事? 今度はシトレが妙な事を言い出した。ホアンを見ると彼もちょっと戸惑った表情をしている。話の流れからすれば……。

「兵を向けられる、という事か? 中立が破られると」
私の言葉にシトレは首を横に振った。
「少し違うな、フェザーンが恐れているのは中立の前提となる条件が崩れる事だ」
シトレが一つサンドイッチを口に入れた。いける、と言った表情をしている。ワインを一口飲んで話を続
[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ