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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第六十六話 苦悩
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タインの言ったカストロプの件を否定している。イゼルローン要塞で帝国の防衛の第一線を受け持つ艦隊司令官が言って良い事ではない。だがグライフスは首を横に振った。

「構わんよ、オーディンでは誰も政府の言う事を信じていない。カストロプの一件はヴァレンシュタインの言う通りだろうと見ている」
「……」
グライフスが溜息を吐いた。溜息が深い、オーディンの状況はこちらが思っている以上に良くないのかもしれない。

「ブラウンシュバイク公もリッテンハイム侯も政府に積極的に協力しようとはしない。そして貴族達はリヒテンラーデ侯が平民達に迎合するために自分達を犠牲にするのではないかと疑っている。政府の威信は日に日に落ちるばかりだ。一体帝国はどうなってしまうのか……」

ブラウンシュバイク公、リッテンハイム侯はリヒテンラーデ侯を切り捨てようとしている、オフレッサーの言ったとおりだ。そしてヴァレンシュタインは帝国貴族の間にも毒を流した。その毒が更に政府の求心力を低下させている。

「ところで中将は反乱軍に大きな人事異動が有ったのは知っているかな」
溜息を吐いた後、グライフスが首を振って話題を変えてきた。
「はい、ヴァレンシュタインが中将に昇進し艦隊司令官になったと聞いています」

グライフスが頷いている、表情が渋い。
「他にも艦隊司令官になった人間が居る。マルコム・ワイドボーン、ヤン・ウェンリーだ。ワイドボーンは早くから将来を嘱望されていた人物らしい、ヤン・ウェンリーは……」

「エル・ファシルの英雄ですね」
エル・ファシルの奇跡、帝国にとっては屈辱だがそれが有った時、俺は未だ幼年学校の生徒だった。面白い男が居るものだとキルヒアイスと感心したものだが、その男が今敵となって立ち塞がろうとしている。ヴァレンシュタインも厄介だがヤン・ウェンリーも厄介だ。そしてマルコム・ワイドボーン……、無能ではあるまい。

「厄介な男達が艦隊司令官になった。三人とも反乱軍の司令長官シトレ元帥の信頼が厚いらしい。ワイドボーンやヤンはともかく亡命者のヴァレンシュタインがな……。卿はあの男の艦隊の事を聞いたか?」

「兵力が二万隻だという事なら聞いています」
ヴァレンシュタインの率いる艦隊の兵力は二万隻と言われている。反乱軍では通常一個艦隊の兵力は一万五千隻、それよりも五千隻多い。厄介な話だ、その三人だけでも五万隻近い兵力を持つ。

「それだけではない、ヴァレンシュタインの率いる艦隊は宇宙艦隊の正規艦隊ではない。それとは別にあつらえたものだ。二万隻もの兵力といい亡命者に対する扱いではないな。あの男、反乱軍では余程に信頼されているらしい……」
「……」

信頼されるのも無理は無いだろう。ここ最近の帝国軍の損害はあの男がもたらしたものなのだ。艦艇十万隻、兵員一千
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