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リアリズム
第二章

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「そうだな」
「はい、定番ですね」
「タキシードにマントでダンディに決めてて」
「しかも日光と十字架と銀と大蒜に弱い」
「美女の喉元から血を吸いますね」
「そうしますね」
「それは違う」
 そうしたドラキュラ像に代表される吸血鬼像はというのだ。
「日本の吸血鬼を造るがな」
「ドラキュラ伯爵みたいにはしないですか」
「そうなんですね」
「現実の吸血鬼でいく」
 ここでもだ、打越はこのスタイルでいくというのだ。
「現実のだ」
「現実の?」
「それでいくんですか」
「吸血鬼ってやっぱり現実にいたんですか」
「そうした話が実際にバルカン半島にあるからな」
 この場所でというのだ、東欧の南の方になる。
「そうした感じでいく」
「日本の吸血鬼ものですか」
「そうしますか」
「そうだ、そうしていくぞ」
 こう言うのだった。
「いいな」
「はい、じゃあそうした吸血鬼で、ですか」
「現実の吸血鬼ですか」
「今度の映画はそれですか」
「それでいくってことで」
「制作していくんですね」
「現実の吸血鬼を見せてやる」
 是非にというのだった。
「絶対にな」
「わかりました」
 映画会社の面々も打越が人の話を聞かずしかも止められる者ではないことを知っていてだ、それでだった。 
 頷くしかなかった、そして制作ははじまったが。
 墓場から這い出る吸血鬼の撮影にだ、吸血鬼役の松坂美優は実際に地面から這い出た後で彼女のマネージャーに言った。蒼白のメイクに血走った目と乱れた髪に死に装束という壮絶な恰好でだ。
「あの、吸血鬼ですよね」
「そうだよ」
 マネージャーはアイドルだが今はそうした格好になっている美優に答えた。
「これがね」
「ゾンビじゃないんですか?」
 美優はメイクからも困惑した顔で言うのだった。
「これじゃあ」
「いや、これがね」
「吸血鬼なんですか」
「そうみたいだよ」
「あの、血の吸い方も」
「うん、襲い掛かってね」 
 そうしてというのだ。
「胸を食い千切って」
「そして貪るみたいな感じで」
「殺して吸うんだ」
「誘惑してじゃないんですね」
 美優はドラキュラのイメージから言っていた。
「そうして首筋から吸うにしても」
「殺さずにね」
「徐々にですよね」
「僕もそう思っていたよ」
 マネージャーの方もというのだ。
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