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北欧の鍛治術師 〜竜人の血〜
プロローグ 始まりの咆哮
始まりの咆哮W
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一夏がアルディギアに来てから3日が経った。その間、王宮の隣にある屋敷で過ごしていた。そんな好待遇は自分には勿体無いと言いはしたがどうせこの屋敷を使う人間はいないから自由に使ってくださいとラ・フォリアに言われ結局ここで落ち着いている。さすが竜の回復力と言うべきか、1日ででおぼつかなくはあるが立てるようになり、2日目には歩けるようになった。今では走るにしても運動するにしても支障は全くない。今はアルディギア産の紅茶を飲みながら一日中庭の風景を眺めるのが唯一の楽しみである。アリアの顔を思い出しながら感傷に浸るのも悪くはないだろうと思いながら紅茶をカップに注ごうとすると視界の端にこちらに歩み寄る人影が見えた。ラ・フォリアだ。
「調子はどうですか?」
一夏は椅子から立って一礼すると、ティーカップをもう1セット取り出して紅茶を注いだ。
「おかげさまで傷も癒えました。もう運動しても問題はなさそうです」
「そうですか。それは良かった。そこで一夏。一つ、試したいことがあるのですが協力してくれますか?あ、紅茶いただきますね」
「どうぞ。俺にできることであればなんでもおっしゃってください」
「では、まいりましょうか。詳しい事は現地で話します」
そう言って紅茶を飲んだラ・フォリアが一夏を連れて行ったのは城の地下。広間にあった隠し扉(巧妙に隠されていた)を通るとそこには広間よりも遥かに大きな穴があった。壁沿いに削って作られた階段が緩やかに敷かれ、所々にランタン型の光源が壁から吊るしてあった。おそらくこれも魔導技術でエネルギーを確保してあるのだろう。下を覗くとその最奥は真っ暗で何も見えない。足を滑らせて落ちればまず体はグチャグチャだろう。
「目的地はこの下です。柵などはありませんので注意してください」
そのまま五分ほど階段を下ると、ランタンの光に反射しているのかチカチカと光る物が一番下に見えた。最下層まで降りきって、それを間近で見ようとして一夏は衝撃を受けた。それがあまりにも異様な形をしていたからだ。言うなれば、針の(むしろ)。所狭しと剣が地面に突き立てられている。よく見れば短剣や槍までもが所々に入り混じっている。ざっと数えても500は下らないだろう。
「これは先代の打ってきた剣です。仕上がりは他の工房よりも遥かに良い良質なものなのに先代からしてみればどれも(なまくら)同然だったそうです」
本当に切れ味の良い刀や剣は正面から見たときに薄すぎるがために刃が見えないらしい、とどこかで見聞きしたことがある。ここの剣は5、6本見ただけでもすべてそうだった。一夏が剣を見ているとラ・フォリアが階段を降りきってすぐにあった道を指差して目的地はあの先です、と言った。一夏は剣を眺めるのもそこそこに切り上げ、ラ・フォリアについて行った。その通郎を抜けると2人は小さな空間に出た。
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