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俺の四畳半が最近安らげない件
プリズンブレイク
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数百年の時を経て錆びる鉄格子を隔て、俺とその男は対峙していた。
「ようやく…この時が来たんだな…!!」
涙があふれて来た。鉄格子にしがみついて落涙する俺を、その男はただ、ぼんやりと眺めていた。
ぼんやりと。
眺めている。
ただ、眺めている。
………あれ?


いやこれ、ちょっと…引いてる…?


「えっと…囚人の方…ですよね?」
新人看守の男は、いぶかしげに俺を覗き込む。
正方形の小さな牢屋…畳で云えば四畳と半分くらいの広さだろうか。その空間にびっっっしり書き込まれた『正』の字にも、鉄格子に飛びついて泣く囚人にも、事情がよく分からずただドン引きしている、そんな顔だ。
俺は思わず崩れ落ちた。…そんなの、ありかよ。


258年前の政変で、敗北した革命軍についていた俺は投獄された。


龍の血脈を引き継ぐ俺たちの寿命は、とても長い。寿命が長いだけで大した能力を持っているわけでもないんだが…一つだけ、他種族にはない特徴的な能力がある。
俺たちは、転生をする。
革命軍の中核をなす連中が悉く処刑される中、俺が処刑されなかったのはこの能力のためだ。俺を殺せば何処か別の場所に顔と名を変えて転生する。記憶を宿したままでだ。つまり俺を殺すということは釈放と同義である。
厄介者の俺と、もう一人の龍族『テパクグ』は高い塔に幽閉されることになった。
「…ドワーフとかだったら、牢を破る器具を作れるのになぁ」
「エルフだったら魔法で脱獄とかするんでしょうかねぇ」
「そういうことが出来る連中は、真っ先に処刑されたが」
「俺達ってほんと、長生き以外に芸がないですよねぇ…」
寿命の長い俺達としても、既に初老の域に差し掛かっていたテパクグは、思慮に沈むように顎に手をあてて俯いた。
「長生き以外の芸…も、あるだろう」
そう呟いてテパクグは、平べったく削った石を掌でもてあそんだ。
「へぇ…器用じゃないですか。ドワーフほどじゃないけど」
石はちょっとしたナイフのように見えた。…それで鉄格子を切って脱出できるとは思えなかったが。
「おい、俺は牢を抜けるぞ」
テパクグは石のナイフを自分の首筋にあてた。
「ちょっ…何を!?」
「まぁ聞け。俺は『転生』をする。そして種族を隠し、ここの『看守』に就職する機会を狙う」
「長生き以外は人間と変わらないですからね!」
「その時に必ず、俺はお前を脱獄させる。龍族同士なら分かるだろ、魂の形が」
これも龍族の特徴だが、龍族同士であれば、転生しても互いの魂を認識出来る。これも転生という特殊な性質を持ちながらも互いを認識する必要から生じた能力なのだろうが。
「必ず助ける。…生き延びろよ」
俺はぐっと目を閉じ、頭を下げた。
「…お願いします!!」



……その後は、ちょっとした地獄だ
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