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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第五十五話 第七次イゼルローン要塞攻防戦(その5) 
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立たせたのかもしれない。准将は冷笑を浮かべるとさらに言い募った。

「亡命者に行き場は無い、利用できるだけ利用すれば良い、その間は高みの見物ですか、良い御身分だ」
「そこまでだ、ヴァレンシュタイン、言い過ぎだぞ」
ワイドボーン准将がヴァレンシュタイン准将を窘めた。ヴァレンシュタイン准将が納得していないと思ったのだろう、低い声でもう一度窘めた。
「そこまでにしておけ」

ヴァレンシュタイン准将はワイドボーン准将を睨んでいたが“少し席を外します”と言うと艦橋を出て行った。その後を気遣わしげな表情でミハマ少佐が追う。二人の姿が見えなくなるとヤン准将はほっとした表情でワイドボーン准将に話しかけた。

「有難う、助かったよ」
「勘違いするなよ、俺は“言い過ぎだ”と言ったんだ。間違いだと言ったわけじゃない」
「……」

「奴はお前を高く評価している。それなのにお前はその評価に応えていない」
ワイドボーン准将の口調は決してヤン准将に対して好意的なものではなかった。そしてヤン准将を見る目も厳しい。ヤン准将もそれを感じたのだろう、戸惑うような表情をしている。

「そうは言ってもね、私はどうも軍人には向いていない」
「軍を辞めるつもりか? そんな事が出来るのか? 無責任だぞ、ヤン」
「……」
准将の視線が更に厳しくなったように感じた。

「ラインハルト・フォン・ミューゼルは着実に帝国で力を付けつつある。彼の元に人も集まっている、厄介な存在になりつつあるんだ。どうしてそうなった? ヴァンフリートの一時間から目を逸らすつもりか?」
「……」

ワイドボーン准将の言葉が続く中シトレ元帥は目を閉じていた。戦闘中に眠るなど有りえない、参謀達の口論を許す事も有りえない。眼をつぶり眠ったふりをすることでワイドボーン准将の言葉を黙認するという事だろうか……。つまり元帥もワイドボーン准将と同じ事を思っている?

ヤン准将が顔面を蒼白にしている。ヴァンフリートの一時間、一体何のことだろう……。
「お前がヴァレンシュタインより先に軍を辞める事など許されない。それでも辞めたければミューゼルを殺してこい。それがせめてもの奴への礼儀だろう。俺達が奴を苦しめている事を忘れるな」

そう言うとワイドボーン准将は視線を戦術コンピュータに戻した。遠征軍は次第に前後から追い詰められて行く。戦況は圧倒的に同盟軍の優位だった。そして総旗艦ヘクトルの艦橋は凍りついたように静かだった……。



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